福岡市の概要
福岡市は九州北部に位置し、日本の主要都市(大阪、東京、札幌)までの距離と、東アジアの主要都市(釜山、ソウル、上海、北京、台北など)までの距離とがほぼ同じ範囲内にあります。
また、人口は150万人を突破し、面積は341.70km2です。 特徴としては、133kmに及ぶ海岸線と市域の32%を占める森林、都心から半径10km以内で本市域をほぼカバーできること等から、 豊かな自然が都心に身近に存在しているということがいえます。
さらに、国際空港である福岡空港と国際港である博多港、陸上交通では市営地下鉄、JR九州・JR西日本、西日本鉄道、環状線である福岡都市高速道路、高速道路が連携しています。
筆者:ECOLOGライター(別府 浩司)
(この記事は弊社発行媒体「環境パートナーズ(2014年6月号)」より再編集して掲載しています。)
森林の現状
福岡市の森林面積は、11,054haで市域面積34,170haの約1/3を占めています。 また、民有林の63%が人工林であり、その93%をスギとヒノキが占めます。
オフセット・クレジット制度に取り組んだ経緯
戦後、拡大造林により植林された人工林は、全国的な木材価格低迷の影響から採算性の悪化による林業生産活動の停滞や、森林所有者の高齢化、 不在村化等を背景に森林所有者の施業意欲が減退しており、放置され荒廃した森林が増加傾向にあること、森林の有する多面的機能の発揮に支障をきたしかねない事態が生じています。
一方で、福岡市が管理している森林においても、近年の財政状況悪化のために管理費が縮小され、満足できる管理を実施できたとはいえない状況でした。 これら複数の課題を解決するための手段の一つとして、J-VER制度に取り組みました。
政令指定都市J-VER第1号プロジェクト
福岡市営林間伐促進型プロジェクトとは、福岡市営林の適正管理(間伐等)により、増加した二酸化炭素(CO2)吸収量の一部を、J-VER制度を利用して売却し、 その収益を森林管理に環流し、森林の整備・保全を促進するとともに、地球温暖化防止対策を含めた環境保全に資するものです。
平成22年6月に環境省が公募した事業者支援事業に応募したことを皮切りに、計画書の妥当性確認やモニタリング報告書の検証を第三者機関に実施していただき、1年の歳月をかけて、 政令指定都市としては初めて平成23年6月30日にJ-VERを取得しました。
その後、価格設定や実施要領、契約書作成等の検討を行った中で、福岡市営林J-VERをブランド化する一環としてロゴを作成しました。
このロゴは、木の切り株から新芽が出てきている形と音符をイメージしています。 切株の中には福岡市の風景を配置し、「自然と都市とのハーモニー」を表現しています。 そして、平成23年11月から販売を開始以来、カルビー㈱カルネコ事業部をはじめ、合計30の個人や企業に毎月ご購入いただいております。
これまでの取組みとしては、地球温暖化防止に積極的な福岡市地球温暖化防止市民協議会の会員や地場企業を中心に、販促活動を進めてきましたが、 収益ありきではなく森林保全を通しての地元への貢献や地球温暖化防止・土砂災害防止への寄与、地域振興等も考慮してきました。
プロジェクト概要
対象森林:福岡市早良区に点在する市営林において、平成19~21年度に間伐等の森林整備を実施した森林、対象面積:131ha(スギ25ha、ヒノキ106ha)
認証量:4,873t-CO2
今後の取組み
福岡市全体としては「人と環境と都市活力の調和がとれたアジアのリーダー都市」をめざして取り組んでいますが、販売の取組みについては、これまで同様、 福岡市営林J-VERに興味のある地場企業を中心に、福岡市営林J-VERの魅力や特徴を直接説明していきながら、共感の得られた事業者へ販売していきたいと考えています。
また、それがさらなる地産地消へとつながることで、しくみがシンプルになり第三者からも理解されやすく、地域活性化へとつながる足がかりにもなることを期待して、 今後も取り組んでまいります。
最後に
平成25年4月からJ-VER制度と国内クレジット制度が統合されたJクレジット制度の運用が開始されたことから、クレジット市場の活性化や利便性の向上、 地域活性化のきっかけ等がこれまで以上に期待されています。
ただし、福岡市においては、現在所有しているJ-VERは、「旧クレジット」として扱われかねず、今後の販売にも悪影響を及ぼす可能性がありますが、 これまでJ-VER制度を通して関わらせていただいた専門家や他都市・民間の担当者など多くの方々と交流でき、森林資源に新たな付加価値を付けられたことは、 今後の福岡市の森林保全や低炭素社会の構築を考えるうえでたいへん有意義なことだと確信しています。 今後も皆様のご協力をよろしくお願いいたします。