地球温暖化を代表する気候変動災害への予測と他国事情

オーエスラボ株式会社 代表取締役


 

30年前から提唱される「地球崩壊のシナリオ」

私は、1990年代初頭から気候変動(特に地球温暖化)が私達の生活にどのような影響があるのか、専門である山本良一氏の発言について、追っかけさながら、セミナーなどを全て逃さず聞いてきました。すでに90年代初頭には「地球崩壊のシナリオ」が発表されていました。

承知の通り、1992年にはリオデジャネイロで地球サミットが開催され、地球資源の利用プロトコル(protocol)と言える「アジェンダ21」が、多くの国々と関係組織によって採択されました。図らずも、IPCCの地球温暖化対策への取り組みについても、同年に合意を得ています。言い換えれば、1992年は地球が抱えている課題について、はじめて先進国も発展途上国も合意を得た年とも言えるでしょう。

ところがどうでしょう。2015年の第21回気候変動枠組条約締約国会議で採択された「パリ合意」まで、地球が抱える深刻な現象に対する改善の取り組みは、ほとんど進展が見られなかったのが現実です。92年の「アジェンダ21」は忘れさられ、「パリ合意」でリセットかけられる形となってしまいました。「パリ合意」の成立も米国のトランプ大統領による同合意からの離脱により、有名無実になってしまったのが実際です。

シナリオは前倒しで進行している

ある科学者によれば、すでに地球温暖化は後戻りのできない状況にあり、温暖化地獄に向かってひた走っている。その理由として、カーボン・リサイクル・フィードバック現象が動き始めたと説明しています。化石燃料(fossil fuel)の利用は抑えられるどころか、発展途上国の経済発展により活用レベルが高まり、結果的に大気中に放出される炭酸ガス等(GHG)の量は増加しているのが実際です。したがって、温暖化による気候変動が、台風やハリケーン、はたまたサイクロンなどの発生頻度が高まり、規模も巨大化しています。この現象は、国内外、すでに多く人が実感していると思います。

ちなみに、山本氏の地球崩壊のシナリオでは、2010年までに第一段階、「廃棄物問題の多発」「大気汚染や土壌汚染の深刻化」「異常気象の深刻化」(大洪水、大暴風雨、連続した旱魃の発生、食料価格の高騰等)が進行するとされています。2030年までの第二段階では、「エネルギー価格の高騰」、「原子力発電所の重大事故」、「資源獲得による地域紛争」、「亜鉛など一部の金属不足と枯渇」などが紹介されています。原子力問題は、早々に日本の福島(2011年3月11日)で起こってしまいました。

さらに「難民の移動に伴う地域紛争の多発」、「異常気象の多発」も2030年から60年の間に発生するとされていますが、前倒しで発生していることを実感している人は多いと思います。つまり、90年代初頭に考えられた地球崩壊のシナリオは、加速された形で動いているとみるのが妥当だと考えられます。

コンピュータテクノロジーと環境問題の密接な関係

恐らく、この予測の誤差は、コンピュータテクノロジーの急速な発展に背景があるように考えます。1995年のMicrosoft のWindows95のリリースが、インターネット社会を加速させ、人々が知識を得るスピードに加えて、知識を具現化するスピードも加速された結果、当初の地球崩壊のシナリオが、誤差として見誤ったことと言えるかもしれません。いずれにしても地球崩壊のスピードは早まっていると見るのが妥当のように思われます。

特に中東で起こっている戦争と、アフリカの腐敗国家の存続による不安定化と紛争の多発化が、地球崩壊の加速化の要因の一つだと考えられます。EUが抱える発展途上国の紛争問題(アフリカ、中東アジア)等に伴う難民受け入れ問題は、地球温暖化を含む環境保全との結びつきを考慮されなかった結果だと思われます。EUの難民受け受け入れは、当該国の法制度に伴う対応でしょうが、その制度の適用について正確に読みあぐねているのが実際ではないでしょうか。

つまり、難民受け入れのキャパシティーオーバーの恐れは、EUが想定していないシナリオだと考えます。単なる豊かさを求めて、死の恐怖を脱出する姿と、環境保全とどう結びつけ考えれば良いのでしょうか。EUは次元の異なる環境問題を抱えている国々の集まりのように感じます。単年度の難民流入は、さほど多くはないでしょうが、アフリカ、中東の国々の安定化がそう早く収束するとは考えられない状況から、流れ込む難民の数は増える一方だと考えられます。これらの人々とのカルチャーギャップは、容易には埋められるものではないと考えます。

日本人はどう動くべきか

日本がまじめに色々な会議に参加し、そこでまとめられた合意レポートに従い行動することは、早計のように考えます。世界の国々の動きをしっかり見据えて、自国の利益、他国への貢献を図りつつ、地球環境問題への取り組みが必須だと考えます。単なる正義感で地球の環境保全は進められないと、私は実感しています。日本の常識は、世界の非常識だとの考えに基づき、まずは世界の人々の理解をすることこそが必須だと考えます。当たり前ですが、日本人とアメリカ人は、異なります。したがって、ヨーロッパ人はもとより、中東、アフリカ人であれば、なおさらなのです。

私から見れば、これまでの環境サミットは 、金を使って仲良しクラブを推進していたに過ぎません。会議では、本当に我々の地球を救うという考えで、一致を見ていないのが実際だと私は考えます。日本政府は、セレモニーに莫大な資金を使うのではな、環境スパイ(地球を救う人材の意味)を育成し、世界に放つ事を考慮すべです。人は、皆良い人ではありません。地球環境の保全を真剣に考えている人は、まだ、恐らくほんの一握りで、資本主義経済に足を踏み入れたばかりの人たちが、途上国の人々の大半です。頭の良い人たちは、この魅力的なシステムにすぐに気づきます。

環境保全へ力を注ぐエネルギーが、現在の経済システムとの矛盾についてすぐに気付くと考えます。日本人は、世界の人々の胸を打つことが容易ではない事を、知ることです。役人として「仕事」だからではなく、人間として世界の人々と良好なコミュニケーションをとる現実を増やさなければ、私たちの抱える「地球環境問題解決」の前進に向けた一歩は作られないと考えます。

 

本音で向き合い価値観の違いをわかり合う努力を

日本人は、他国の人々との価値観の違いについて、分かり合う努力をしたことが少なすぎると思います。日本人は、シャイな人々だと思われていますが、言うべき時にしっかり言えているいる日本人が、公私ともにどれだけいるのでしょうか。セレモニーと言われる国際会議に参加する人々は、メッセンジャーではない主体を持った報告が、国内外で求められています。絨毯に乗った会議、また、相手国が用意した施設見学、これらは当該国の実情を反映したものと受け止めるのは間違いだと考えます。

役人や科学者ではなく、一般の人々と直に話し合って頂きたい。普通に生活している人々と、本音で話しあって頂きたい。特に、ヨーロッパ(EC)は、極めて不安定要素が高い国々の集まりであるのが実態だと、私は考えています。

この記事の著者
谷 學

谷 學

オーエスラボ株式会社 代表取締役
環境事業支援コンサルタント・経営士・環境経営士。元グリーンブルー株式会社代表取締役。日本の公害対策の草創期より環境測定分析の技術者として、環境計量証明事業所の経営者として、環境汚染の改善及び業界の発展のために邁進。2007年には経済産業大臣より計量関係功労者表彰を、2013年には経営者「環境力」大賞を受彰。50年にわたる環境問題への取組み実績を持つオピニオンリーダー。

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