環境技術実証事業10年の経緯と最近の状況


事業のねらい

環境技術のなかにはすでに実用化され、有用と思われるにもかかわらず、先進的であるがゆえに、その性能の善し悪しを客観的に示す指標がなく、 地方公共団体、企業、消費者等のエンドユーザーが安心して使用することができず、普及が進んでいないものがあります。

環境省の環境技術実証事業(ETV事業:EnvironmentalTechnologyVerification)とは、このような技術の環境保全効果等を第三者機関が客観的に実証することにより、環境技術の普及を促進し、 環境保全と地域の環境産業の発展が図られることを目的とした事業で、平成15年度より実施しています。

なお本事業における「実証」とは、環境技術の開発者でも利用者でもない第三者機関が、環境技術の環境保全効果、副次的な環境影響、その他を試験等に基づく客観的なデータとして示すことを指します。 これは、一定の判断基準を設けて、この基準に対する適合性を判定するいわゆる「認証」とは異なります。

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http://www.env.go.jp/policy/etv/

筆者:ECOLOGライター(吉川 和身)
(この記事は弊社発行媒体「環境パートナーズ(2014年7月号)」より再編集して掲載しています。)

事業の概要

事業の概要と流れ

環境省が対象技術分野に関する実証機関を選定した後、実証技術の公募を行います。 選定された技術に関しては、外部有識者による助言を受けながら実証機関が実証試験を実施し、実証試験結果報告書を作成します。 実証運営機関は、実証機関のマネジメント機関として、実証機関に対して助言等を行うとともに、ETV事業の普及のための企画立案・広報等の役割を担います。

実証技術には環境省がロゴマークを交付し、実証試験結果報告書を環境省ウェブサイトにて公表しています。

 

対象技術分野

対象技術分野は、技術開発者やユーザーなどからの実証に対するニーズを把握しつつ、外部有識者検討を踏まえ、環境省が選定します。 平成25年度は9分野を設定しています。

 

実施体制

事業全体の運営管理を環境省が、実証試験の実施から実証試験結果報告書の作成までを実証機関が担い、実証事業を実施しています。

 

ETV事業のメリット

ユーザー側と実証申請者側のETV事業のメリットは以下のとおりです。

【ユーザー側】
・信頼できる情報により、安心して環境技術を購入できるようになります。

【実証申請者(企業)側】
・環境保全効果を客観的に説明できるようになります。
・実証プロセスを通じて、専門家による技術的アドバイスを受けることができます。
・環境省や実証機関等によるPRの機会を得ることができます。

 

これまでの実証実績と活用実績

(1)実証実績
平成24年度末までの実証済技術数は延べ520技術(平成24年度末まで)に上ります。また、当事業は土木学会地球環境委員会「第20回地球環境シンポジウム」において、平成24年度地球環境技術賞を受賞しました。

(2)活用実績
実証試験結果の活用事例としては、東京都北区の省エネルギー等機器導入費用の助成制度の要件に、ETV事業の対象技術であることが明記されています。

 

ETV関連の国際的動向

すでに米国、カナダ、EU、韓国、フィリピンにおいて独自のETV事業が実施されています。 また、これらの国によるETV事業の国際連携・相互認証に向けた任意の作業部会が立ちあげられ、2カ月ごとに開催される電話会議において、ETVを実施する各国間での情報共有が行われています。 日本はオブザーバーとして参加しています。

さらに、2012年10月にETVのISO化に係るカナダからの提案書がISO事務局に正式に受理され、2013年2月にTechnicalComittee207のSubComittee4においてISO化の基準に関する検討が行われることが決定しました。 今後、TechnicalComittee207のSubComittee4においてISO化の検討を具体的に進めるためのワーキンググループが立ち上がる予定です。

 

新規技術分野の設定と既存技術分野の見直し

新規技術分野の設定

新規技術分野の設定については、すでに適用可能な段階にありながら、環境保全効果等についての客観的な評価が行われていないために普及が進んでいない先進的環境技術から、技術の動向、市場の要請、 社会的必要性等を踏まえ、設定しています。技術分野の選定に当たっては、必要に応じ外部有識者の助言を得つつ、以下の観点を踏まえることとしています。

①開発者、ユーザー(地方公共団体、消費者等)から技術実証に対するニーズのある技術分野

②普及促進のために技術実証が有効であるような技術分野

③既存の他の制度において技術実証等が実施されていない技術分野(ただし、地方公共団体等ですでに技術実証等が実施されているものの、 環境省がこれを支援することでさらに効果的な事業となる可能性がある技術分野は対象とする)。

④実証が可能である技術分野・予算、実施体制等の観点から技術実証が可能である技術分野・実証試験要領が適切に策定可能である技術分野

⑤環境行政にとって、当該技術分野に係る情報の活用が有用な分野 これまでに、制度当初の3分野に加え、13分野を新規設定しており、最近では、本年度から中小水力発電技術分野を設定しました。

日本では中小水力発電は、
・「新エネルギー利用等の促進に関する特別措置法」において、「技術的に実用段階に達しつつあるが、経済性の面での制約から普及が十分でないもので、石油代替エネルギーの導入を図るために必要」なエネルギー
・「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法」において、「電気事業者に対し、経済産業大臣が定める一定の期間・価格により買い取る(調達する)よう義務を課す」エネルギー の一つとして位置付けられています。

既存の1万kW未満の水力エネルギーは出力350万kW(1,322カ所)とされていますが、未開発分の出力は1万kW未満に関して680万kW(2,471カ所)、 1,000kW未満だけで300万kWの導入可能性がある)ともいわれています。

一方、中小水力発電設備については、かつては大手メーカーのみが製造していましたが、近年地域レベルの鉄工所等が製造するケースが増えているため、その性能について、 客観的な観点で実証等を行うことが課題となっています。こうした背景を踏まえ、ETV事業では、中小水力発電技術を対象技術分野として、本年度より実証事業を開始することとしたものです。

 

既存技術分野の見直し

一度選定した対象技術分野についても、3.1に示した観点に照らし実証を行うことが不適切となった場合や、対象技術の公募に対する応募が見込めなくなった場合等合理的な理由がある場合には、 必要に応じ外部有識者の助言を得つつ、対象技術分野を一時的または継続的に休止または廃止することとしています。

また、一度選定した対象技術分野について、実証事業の円滑な運営の観点から、必要に応じて外部有識者の助言を踏まえつつ、他の対象技術分野と統合または分割をすることとしています。 これまでに、VOC処理技術分野、非金属元素排水処理技術分野等の7分野を休止しています。

 

今後の実証事業の展望

本事業を開始してから10年が経過し、この間に国内における環境技術への関心は高まりつつあり、また、ETV事業のISO化等、国際連携の動きも活発になりつつあります。 このような状況を踏まえ、環境省としては最新の社会ニーズ等を踏まえて随時実証対象分野の見直しを行い、事業の効率を高めていくこととしています。

また、展示会や学会等への出展、環境省ETV事業ホームページでの情報発信、実証試験結果報告書の内容の改善等、ETV事業の認知度を高めるための取組みを強化してまいります。 さらに国際的取組みとしてISO化の国際連携を進めることで、日本の実証技術の海外展開を促進し、また近隣アジア諸国とも環境産業技術交流を進め、ETV事業の効果を高めてまいります。

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