エネルギーを栽培したいと願う-ジュアン・エンリケ1/2(TED書き起こし)


 

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バイオエネルギーとは何か?エタノールのことではありません。バイオエネルギーは地球温暖化のことではありません。直感に反してバイオエネルギーとは石油やガスや石炭のことです。未来に向かって架けていく橋の一部として海を合理的に捉えたり地球の周回軌道に人工衛星を打ち上げたり電子レンジで温めたりできるかどうかはバイオエネルギーの理解と管理にかかっています。そこでまず農業を見てみましょう。

 

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耕作の歴史は、1万1千年ほど作物を植える技術として農業から学んだことは害虫の退治です。あらゆる悲惨な出来ごとにも対応して作物を栽培しなければなりません。栽培するためには水の使い方を学び、そしてナイル流域から広まっていきますそれから動力を手に入れて灌漑(かんがい)によって農業が変わりました。

 

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灌漑を行えばどこでも作物を植えられます。それまでは河が氾濫する所に限られていました。こんな有機農法にやがて機械を投入し始めます。機械力と大量の水によって農業は非常に大規模に行われるようになります。機械力と水とを投入するとこんな景色が作り出されます。こんな商売も現れます。物量作戦です。さて農業は実に自然なものから始まりやがて自然のシステムを制御し始めました自然に対してどんどん力を加えます。山ほどの農薬と除草剤を投入し(笑)—自然のシステムからこのようなシステムに到達します。

これは全くもって力まかせの手法です。エネルギーについても同様です。農業から学んだことはシステムを組み合わせたり生物学にもとづいたシステムの研究を進めることで物量作戦から脱却できたということです。工学の原理や化学の原理から離れて生物学の領域に入ります。人類の中で最も重要な人の一人である後ろのスクリーンのこの人は、

 

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ノーマン=ボーローグです。ノーベル賞を受賞し、栄誉賞も得ています。彼の偉業はこれら全てに値します。かつて無いほど多くの人に食糧を提供した業績が認められています。彼は生物学の種子への応用をメキシコで研究していました。インドと中国でひどい飢餓が無くなったのはボーローグが穀物の効率的な育て方を指導して緑の革命が始まったからです。これを批判する人も多いですが、その人たちは中国とインドで多くの国民が飢えることが無くなり、さらに穀物を輸出している現状を見逃しています。

皮肉なことに彼が研究に従事していたメキシコではこの技術を採用せず無視しました。この技術についてあれこれ論じながら実地には適用しませんでした。自国発の技術を採用しなかったメキシコは結果としてずっと穀物の大量輸入国のままです。彼の功績を認めようともせず、メキシコのどこにも彼の彫像はありません。中国とインドには彫像が立っていて彼の組織はインドに移転してしまいました。技術を採用する事と技術を論じる事はこれほどに違うのです。彼は世界中のとてつもない人数に食糧を提供しただけではなく、生物学の知見によって技術そのものを大きく変えました。

 

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農業に何が起きたのでしょうか?この百年の農業を概観すると、1900年頃の農業は千年前の農民にも理解できるものでした。鍬が違いラバがトラクタに変わっても百姓なら何が何のために行われているかそしてどうなるのかを理解できるはずです。農業が本当に変わり始めたのは工学と化学による物量作戦から生物学に移行したときで、それから生産性が増大し始めたのです。生物学の応用に伴って生産性がこのように改善しました。

 

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すなわち100ブッシェルを生産するために250時間かかったのが、40から15そして5時間まで短縮しました。生産性は1950年から2000年の間に7倍になりました。その他の経済領域では2.5倍の伸びです。一人当たりの生産量は著しく増加しました。「琥珀色に波打つ穀物」のみならず大量の農産物が得られました。EUの予算の50%は山のように作りすぎた農産物に対する補助金に費やされています。

これがエネルギーだったら良かったのですが、ここまでで皆さんは心の中で「おいエネルギーの話を聞きにきたのにこやつは生物学の話をしている」と思われているでしょう。ではこの二つはどう繋がるのでしょうか。バイオエネルギーの話で厄介な点は理解していないシステムについて論じていることです。石油とは何なのかが分かっていないのです。つまり石油が文字通りどこからきたのかそれは未だに論争の種です。この黒い液体が何でどこから来ているのかいちばん良く言っても推測の域を出ません。この物質はこの物質からできたとされます太陽光を吸収した後圧力を受けながら何百万年もかけてこの漆黒の流れになりました。

 

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この理論が真実であれば、石油と全ての炭化水素は濃縮された太陽光である、ここが面白いところです。バイオエネルギーはエタノールのことではありません。バイオエネルギーとは太陽からのエネルギーをアメーバや植物の中に濃縮したもので、だからこんな虹色が見えるのかもしれません。さてこのシステムで炭化水素を濃縮された太陽光と見なすならバイオエネルギーは独特の作用をします。石油とその他の炭化水素はこれらの太陽光パネルシステムの一部と考えなければなりません。テキサスの空から眺める油井の姿がカンサスの灌漑農業が描く図形と同じように見えるのはこんな理由によるのかもしれません。

こういう風に石油を収穫するのです。石油の採掘についてこれまでの発展を振り返ります。力任せの手法から出発して何を学んだでしょうか。より大規模化が必要な事が分かりました。それから何を学んだか?さらに大規模化をしました。辺境からこのバイオエネルギーを収穫するときにはこんなに破壊的な方法です。これはアサバスカでタールサンドを大量に採掘します。世界最大のトラックもここで使われています。この黒い混合物は砂と結合していて流動しない石油です。ここに大量の蒸気を使って石油を分離します。今日の石油価格の上でのみ成立する手法です。さて石炭です。

 

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石炭も実質的に同じ物であることが分かります。おそらくは植物でした。圧力下で燃えて潰されたことが違いです。こんなものを元に燃やして圧力を加えておそらくこれになります。ただ繰り返し強調しますが確実ではありません。皆が石炭について論じているのに奇妙なことです。石炭といえば小麦の種は燃やすとこうなります。石炭と似ていませんか。

いうまでもなく炭坑は大変危険な場所です。なぜなら炭坑ではガスが出ることがあり爆発によって人命が失われることもあります。炭坑によって石炭からバイオガスを産出している所と産出しない所があります。そういう違いに気づくと興味深い疑問が生じます。ガスはどう取り扱えばよいのか、ところで石炭に戻るとほぼ同じ方法論でまさに同じ技術を適用しています。

物量作戦ということです。物量作戦が行き過ぎると山を丸ごと削り取ってしまいます。そして単一で最大の炭素放出源を造るわけです。石炭をガス化する処理工場です。バイオエネルギーの最適な使い方ではないでしょう。このシステム以外の別のシステムを見い出すことは重要です。それはアメリカの石油埋蔵量が減少しているにもかかわらず石炭資源は減少していないからです。中国も同様です石炭の埋蔵量は莫大であり、これをバイオエネルギーとして見直すべきです。化学エネルギーや工業エネルギーとして扱い続けるといずれは大変な状況に陥るからです。

2/2に続く

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