エネルギーを栽培したいと願う-ジュアン・エンリケ2/2(TED書き起こし)


 

ガスも同じ問題を抱えています。ガスもまた生物由来の物質です。みなさんご存知のあれです。これは石炭の掘り方の亜種なのです。これは炭層メタンと呼ばれます。この写真のどこが面白いのでしょうか。石炭が植物の濃縮されたものとすればなぜ鉱山ごとにガスの出方が違うのでしょう。爆発する炭坑もあればそうでもない炭坑もあるのです。もしかすると石炭を食べてガスを造る何者かが居るのかもしれません。よく知られた現象です(笑)何かを食べると沢山のガスを発生する石炭鉱山でも同じような生物学的なプロセスがあるかもしれません。そうであれば石炭からエネルギーを取り出すには山を削って採掘して石炭を燃やす以外の方法もありそうです。農業で達成されたように生物学的に石炭を処理できる仕組みを見い出せばよいのです。

 

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これこそがバイオエネルギーです。エタノールではありません。限られた数社の企業への補助金ではありません。エタノール工場を作りすぎたからとアイオワにコーンを輸入するのではありません。農業に起きた変革の理解は進んでいます。物量作戦から生物学的な力に変革しました。それをする過程で技術をクリーン化することができ、これは非常に速く行えるでしょう。生産性についての指標が少し得られています。十年以上稼働している石炭鉱脈や油田に蒸気を導入すると産出量は増大します。例えば8倍増などこれはまだ初期的な段階にすぎません。

 

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バイオマテリアルといえばこの人、ヒトゲノムの解読の一部を担い世界を巡る航海を通じて遺伝子やタンパクのデータベースを倍増させました。彼はエネルギーの課題にも取り組んでいます。知恵者を何人か集めてシンセティックゲノミクス社やカンブリア社コドン社を一つにしました。これらの会社では物量作戦の代わりに生物学の仕組みを使うことを考えています。こんな風に考えていますある目的のために生物をプログラムする技術を研究します。細胞がハードウェアで遺伝子がソフトウェアですその技術の中で生命は交換可能なプログラムと見なします。エネルギーにもなるし食糧にも繊維にもなり、ヒトにもなるつまりあらゆるものになり得るのです。つまりエネルギーについての問題の枠組みを変化させ、取り組み方を大いに変えることになります。

根本の原理は何で我々はどこへ向かっているのか。画面の人は実に穏やかな人柄の偉人でまたとない最高の人格者ハミルトン=スミスです。遺伝子を切断する技術を開発してノーベル賞を受賞しました。制限酵素と言うものです。彼はその研究をホプキンス大で行いました。控えめな彼のもとに電話してきた母親は「ホプキンス大でもう一人の知らないハムスミスさんがノーベル賞を取ったんだってね」(笑)。お母さんにしてこのありさまです。彼はまさに一流でした。毎日欠かさずピペットと試料を手に実験台に向かっていました。この人が成し遂げたことは何か?

 

 

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むき出しのDNAを移植する最初の試みです。ある細胞から丸ごと取り出したDNAというOSを別の細胞に注入しました。注入された細胞を別の生命体として起動させました。これで発生から1ヶ月、来月にはこの技術について更に重要なものを目にするかもしれません。この技術とその意味とを考えると非常に高い補助金を払ってコーンをエタノールにする以外にやることがあります。生物学がエネルギーの領域に入っていくのです。エネルギーを作り出すためにお金もエネルギーも大変なコストをかけています。 アルバータのタールサンドから集められた硫黄のブロックです。砂と石油を分離するときには大量のエネルギーを使って蒸気を作り、水蒸気で成分を分離させます。そして硫黄も分離しなければなりません。軽油と重油の違いは1バレルあたり14ドルそこで分離された。硫黄がこんなピラミッドになります。実に大きなピラミッドです。

 

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これを作るエネルギーの一部でも取り出せるなら生物学の原理によるもっと小さなシステムでエネルギーの抽出を始められます。ここから技術を伸ばして行って風力発電や太陽光発電や原子力発電に追い着かなければなりません。でもお願いです。次の原子力発電所は美しい海岸線でも、活断層が近いところには建てないで下さい(笑)気になっています。

 

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当面少なくとも次の10年間、それが石油であれガスであれ石炭であれターゲットは炭化水素です。さて話が長くなりすぎないうちに今のエネルギーシステムにはこんなことが起きています。消費するエネルギーの86%は炭化水素、つまりエネルギー消費の86%はおそらく変成した植物やアメーバなのです。資源保護と代替エネルギーの役目はここにあります。

しかし無駄になっている部分についても解決しないといけません。無駄をどうするかということは未来への架け橋です。この未来への橋についてはじっくりと考えるべきことがあります。現在石油の2/3は油田に残されています。つまり巨額を投じていてもエネルギーの過半はそこに残置しています。取り出して利用するには追加のエネルギーが必要だからです。エタノール製造に費やすエネルギーの割合もばかになりません。投入したエネルギーと得られるエネルギーが1対1に成りかねません。システムを管理する上でこれはばかげたやり方です。

 

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さて最後の話題、最後のグラフです。石油の価格を安定させなければなりません。石油の価格はこんな様子です。このシステムは大変困ったもので目標とするレートが大変に安いところに設定されます。太陽電池でも風力発電にしても本当に優れたアイデアが登場したときに何が起きるかというと、石油の価格が底値まで下がります。新しい会社が破産してしまいます。それから石油の値段が戻ります。

そこで今日の話の最後に提案したいことがあります。ヨーロッパとアメリカの石油の価格を安定させましょう。どうやって実施するのか。石油に税金をかけましょう。売上げ税ではありません。今後20年間石油の価格を固定するためです—35ドルなり40ドルの所定価格に—OPECの価格がそれ以下になったら課税します。OPECの価格がそれ以上になったら税金はなしです。

これが起業家と企業に対してどう働くのか・1バレル35–40–50ドル以下で—金額は議論すべきですが—それ以下でエネルギーを開発すれば事業が成立します。ともあれ研究が見合わなくなるような価格変動を放置するのは止めましょう。そうしないとOPECは新しい代替エネルギー事業を潰してバイオエネルギーの登場を阻止するからです。ありがとうございました。

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