―地域から広げよう、中小企業のグリーンパワー―
はじめに
中小企業の経営改善を前面に据えて環境経営システムの構築とその運用支援に取り組む一般社団法人の「エコステージ協会」が主催する「2013年環境経営講演会」が2月20日、東京都内の東商ホールで開催された。今年は「地域から広げよう、中小企業のグリーンパワー」を副題に設定。
2部構成とし、前半は経済産業省の施策やISO14001の見直しの動向に関する基調報告等を実施、後半は「エコステージ」を導入して大きな成果を上げた松栄電機、コルコート、村井索道の3社が優秀事例発表を行った。
古賀理事長が今後の方針
講演会には約280名が参加、大盛況の中で行われた。前半は、まず同協会顧問の宮原明氏(元富士ゼロックス社長)が開会あいさつを行い、エコステージ協会が10周年を迎え、新たなステージに入る節目の時期にあると指摘、さらなる発展へ期待を示した。
次いで経済産業省中小企業庁の林揚哲小規模企業政策室長があいさつし、中小企業の経営改善を前面に据えるエコステージを「同じ志を持つもの」として認め、連携して国内の中小企業発展に取り組もうとエールを送った。
そのうえで、関東経済産業局総合エネルギー広報室長の大場奈津子氏が、中小企業の経営改善や環境・省エネルギー対策の強化を支援するためのさまざまな補助制度や優遇税制の紹介を行った。
さらに、昨年6月に理事長に就任した古賀剛志氏が、「地域から広げよう、中小企業のグリーンパワー」をテーマに基調講演を行い、世界不況の中で日本の中小企業が生き抜いていくためには、経済産業省との連携をベースにして全国の信用金庫・商工会議所関連機関等との協力体制をさらに強化していくことが必要と指摘した。
そのうえで、
▽地方組織と本部ネットワークをさらに広げて全国レベルの組織として強化し、自治体など地方関連機関からのバックアップ体制の強化に取り組む、
▽コンサル体制のさらなる強化に向けて人材育成の強化およびツール・プログラムを開発し提供する、
▽アジアを中心としたモノづくりの国際化拡大の動きの中で国際標準化機構(ISO)等における規格開発、環境マネジメントシステム規格 (EMS)の動向把握がより一層重要となるため、人的ネットワークの強化に取り組む
――などを今後の協会の取組み方針として示した。
松栄、省エネ打開で電力監視システムを開発、事業拡大へ
優秀事例発表の最初に立った松栄電機(株)(本社・東京都、新堀英世社長)は、電気機器の設計・製造・販売を行う会社。
同社は、エコステージ1の認証を2006年に取得したが、そのEMS構築に向けた取組みが新たな事業拡大を呼び込んだ成功例として紹介された。
それによると、同社のEMS構築に向けた取組みの柱は、
①グリーン調達(化学物質管理)、
②省エネルギーの推進、
③省力ソリューション作業の効率化
――の3つ。
最初は欧州の電気製品等の化学物質規制となるRoHS規制への対応が大きな壁となり、これがエコステージ導入のきっかけになったという。
さらに、省エネに向けた取組みにも力を入れた。省エネ効果はいったん頭打ちになったが、それを大きく打開したのが、遠隔監視・遠隔操作・自動遠隔通知を可能とした新しい技術「電力監視システム」の開発・導入だったという。この監視システムの導入が社内の各種業務の効率化・省力化につながった。
そして「クラウドサービス」を導入することで、さらなる省力化を実現することができたという。一方で、この「電力監視システム」が自社の有力商品の一つとなり、大きな事業拡大につながったことが報告された。
コルコート、エコステージで経営の質の強化も
2つ目のコルコート(株)(本社・東京都、野口由美子社長)は、エチルシリケート、帯電防止剤、光学用樹脂成形品などの製造会社で2008年にエコステージ1の認証を取得した。
同社はエコステージ認証への取組みが、環境改善のみならず、業務改善、品質改善を含め経営体質の強化につながった事例、またトップタウンとボトムアップがうまく融合した事例として紹介された。
それによると、同社のEMS構築に向けた取組みの柱は、
①環境にやさしい製品の開発
②省資源・省エネの推進
③廃棄物の削減のリサイクル推進
④化学物質による汚染の防止
――の4つ。同社は、経営者も参加する「環境安全管理委員会」を毎月開き、PDCAサイクルを回す活動を展開した。同社は、進め方等に迷った場合にエコステージの特色でもある評価員との打合せや研修制度を活用。
現場従業員との対話、環境教育等に取り組むことで、社員の環境意識の向上につながり、環境経営へのボトムアップが進んだという。
一方、トップダウンの方針として、この環境改善にISO19001も取り込み「、環境方針」を「環境経営方針」に改定。周辺環境・作業環境の改善、生産性の向上、災害防止・緊急時対応なども並行して進めた。
また、地域への広報活動として「かわら版」を発行、地域住民との良好な関係作りも進めた。こうした環境安全委員会、かわら版などを定期的に進めることにより、トップタウンとボトムアップがうまく融合し、内部コミュニケーションが活発化、環境パフォーマンスの改善に留まらず、経営の質の向上にまでつながったとしている。
村井索道、経営改善でステージ3取得、次はCSRも
村井索道(株)(本社・石川県小松市、柏田高佳社長)は建設機械のコンポーネントパーツ製造会社。2008年にエコステージ
(1環境経営の導入…基礎EMSの構築)の認証を取得後、2009年にステージ
(2環境経営の基礎…体系的なEMSの構築)、2011年にステージ
(3環境経営の成熟…業務プロセスの改善)を取得し、さらにCSRをめざす企業として紹介された。
同社は「全員参加によるムリ・ムダ・ムラの排除活動」を基本に据えてエコステージ活動を進めた。ステージ1に向けては「職場内の整理・清掃・整頓」の3S活動について目標を定量化して取り組み、着実に成果をあげた。その取組みは在庫の削減という形で会社の利益増に結び付いたという。
さらにステージ2に向けてめざしたのが「現場力のレベルアップ」。具体的には中間管理者のマネジメント力の強化を進めた。
そしてステージ3では「企業体質のレベルアップ」を目標に掲げ、
▽エコステージ活動の定着、
▽幅広く企業を取り巻く活動、
▽業務プロセスの機能強化、
▽次世代に向けた教育向上
――に取り組んだ。
その結果、化学物質削減、環境負荷削減等の環境パフォーマンス改善に加え、「職場をきれいにする、顧客への心遣いをみせる」といった社員の意識改革、顧客から信頼を得る無形の効果が得られたという。
さらに引き続き、3Sに清潔・しつけを加えた5S活動を進めるとともに、組織力のレベルアップ、若手人材の育成に取り組む。
また、さらなる企業体質の強化を求めて、エコステージのCSR認証取得もめざすとしている。
エコステージ協会、「経営革新ステージ」認証規格創設へ
講演会の最後には、全国事務局長の峯崎哲氏が登壇し、「エコステージ協会の最新動向」と題して今後の取組みを紹介、その中で2013年から「経営革新ステージ」認証規格を設けることを表明した。
これは経済産業省が進める経営革新等支援機関認定制度に対応する形で導入するもので、経営課題の分析と特定、実効性のある経営戦略や事業計画の立案・実行・見直しといった取組みを進めていくもの。
エコステージをこれまでの 「環境経営を実現するためのツール」から一歩進め、「経営改善の強化を図るためのツール」として進めていく方針を明確にした。
他の国内のEMS推進ツールである「エコアクション21」や「京都環境マネジメントシステム」も、社会的なニーズに応える形で、経営改善のツールとしての取組み強化を進めているが、エコステージはさらにその二歩も三歩も先をいくことになり、今後の動向が注目される。