企業の概要
会社創立:1932年
事業内容:コーヒー豆の焙煎、外食産業向け卸販売、直営店経営、コーヒー豆通販
売上高:約7億円
従業員数:64名本社:大阪府堺市
直営店:大阪市、京都市、茨木市
EA21認証取得:2011年6月
筆者:ECOLOGライター(宇田 吉明)
(この記事は弊社発行媒体「環境パートナーズ(2014年5月号)」より再編集して掲載しています。)
認証取得のきっかけ
自然の恵みを享受しているコーヒー豆の輸入販売に携わっていることから、地球環境の保全への関心が高まっていました。
ちょうどそのころ、大阪府中小企業家同友会がエコアクション21(EA21)認証取得スクールを開催することを知り、迷わず参加しました。
認証取得で苦労した点
食品関連事業者向けガイドラインでは、食品リサイクル率が食品リサイクル法で定めた一定の基準を満たすことが条件となっています。食品廃棄物は主にコーヒー豆の焙煎工程で発生する豆の皮 (チャフ)で、湿式のサイクロンで捕集し、すべて廃棄物として処理していました。
このため、発生抑制策として、焙煎や包装での不良品の低減、不良在庫の抑制、チャフの水切りの実施などを実施し、規定のリサイクル率を確保して認証取得に至りました。
現在では、チャフの堆肥化業者を開拓し委託しているので、この問題は解決しています。
環境活動レポートの充実
所属する大阪府中小企業家同友会では環境経営を促進するために、毎年、EA21認証取得事業者を対象に環境活動レポートのコンテストが実施されます。
現在、会員企業約70社がEA21を認証取得しており、数社が表彰されます。認証取得時にスクールで提供されたサンプルは実務的で、そのままでは表彰されるのは難しいと考え、社内でコンテンツの作成が得意な男女社員1名ずつにレポートの作成を任せました。
2回目のレポートとしては出来栄えもよかったので見事「環境レポート大賞」を受賞することができました。
同時に、環境省主催の第16回「環境コミュニケーション大賞」に応募したところ、「奨励賞」を受賞することができました。ダブル受賞の影響は大きく、社内での盛り上がりはもちろんのこと、認証取得者向け研修会での事例発表の機会もでき、企業PRにつながったものと思われます。
改善活動とコストダウン効果
EA21は目標管理のしくみです。削減目標を設定した電力、ガソリン、廃棄物、水道水について、社内で改善への取組項目と責任者を決め、全員で取り組むことにより、取組開始後から大きな成果が現われました。
とくに水の使用量削減では、焙煎工程でのチャフの捕集に掛け流しで使っていた水に着目しました。これを課題化することにより、改善活動が行われ、試行錯誤の末循環方式を完成させ、使用量半減の節水となりました。
また、ガソリン消費量の削減では、「おおさか交通エコチャレンジ」に登録、堺市からの出前講座でエコドライブシュミレーターを受講、大阪府無事故・無違反チャレンジコンテストに参加するなど思いついたことに積極的に取り組んでいこうという雰囲気が出てきました。
その他に、包装作業の改善、帳票のペーパーレス化、パレット廃材の銭湯での燃料利用、手作りによる窓の断熱、補助金利用によるLED照明への更新など一気に改善が進みました。
一方、廃棄物の適正処理などで費用が増えたところもありましたが、トータルで見ると認証取得維持費用の十数倍のメリットとなっています。
3S活動との連携
以前から3S(整理・整頓・清掃)活動に取り組んでいましたが、実際のところ思うように進んでいませんでした。しかし、EA21の取得をきっかけに社内の雰囲気が大きく変わり、“見せる工場づくり”に力が入るようになりました。
節電、節水の表示の工夫から始まり、各種置き場の工夫と表示、区画整理と床の塗装などが進み、これらを掲示板に紹介することによりさらに改善が進むという好循環になっています。
店舗での取組み
自然農法や有機栽培で育てられたスペシャルティコーヒーの販売にも力を入れています。また、包材の工夫による簡易包装などにも取り組んでいます。店舗でも何かできないかと話し合う中で、社員の提案でコーヒー抽出カスを自然乾燥させたものを小袋に詰め配布しています。
ペットの消臭や植木鉢の敷物としてお客様が持ち帰ってくれています。廃棄物の削減とともに、お客様とのコミュニケーションに貢献しています。このように各部署でEA21を通じてさまざまな取組みが広がっています。
今後の課題
さまざまな改善活動が一気に進み、環境活動レポートの受賞もあり社内は盛り上がっていますが、今後も継続して改善活動を進めることが課題です。
審査人から一言
審査の中で助言させていただいたことが皆さんの創意工夫ですぐに反映されるという、審査人冥利に尽きる会社です。今後も、それぞれの業務の改善をEA21の活動計画書に落とし込んでPDCAを回すことで継続的な改善活動が期待されます。