エコアクション21取得事業者における環境経営の実際 <第3回>
事務所の概要
代表社員:赤津 加奈美
事務所創立:1997年
事業内容:公害・環境・行政事件,その他一般民事事件(交通事故,離婚・家族問題,相続・遺言・遺産分割)の訴訟代理等法律事務。中小企業の環境経営支援
社員数:2名
事務所床面積:52㎡
本社:大阪市
EA21認証取得:2006年5月
(弁護士事務所としては第1号)
筆者:ECOLOGライター(宇田 吉明)
(この記事は弊社発行媒体「環境パートナーズ(2014年6月号)」より再編集して掲載しています。)
目次
認証取得のきっかけ
四大公害訴訟の頃,テレビで住民が大企業に勝訴するのを見て感動し,赤津氏は弁護士を志しました。当事務所は,業務活動の大きな柱の一つとして,公害訴訟をはじめとした環境問題に取り組んでいます。
また,こうした取組みに加え,今後ますます整備されていく環境法の知識研鑽に努め,中小企業経営における環境問題にも対応できる法律事務所をめざしたいと考え,自分の足元も見直すつもりでエコアクション21に取り組み始めました。
認証取得で苦労した点
当事務所は大阪府中小企業家同友会の平成17年度第2回認証取得スクールに参加しました。12社が参加し,6回の集合研修で9社が認証取得しました。社員2名でしたので,一番の苦労は仕事をやりくりし,勉強会に出席することでした。
また,認証取得後1年ほど経過したところで,社員が産休に入ったため,臨時の派遣社員にも引き継いでもらうなど苦労した時期がありました。
環境負荷低減活動
当事務所の主な環境負荷は電力と都市ガスによる二酸化炭素の排出,一般廃棄物の排出です。水道水は共有のため,データの把握はできません。
電力は主に照明とOA機器による消費です。照明は,従来1回路で人がいないところも点灯していたので,もったいないと思い,ビル管理会社に依頼し3回路に変更してもらいました。
また,ファクシミリは更新の際,省エネ性能の優れたものを選択し,パソコンも省エネモードに設定しました。
以前から省エネには取り組んでいたつもりでしたが,認証取得の取組み前に比べ約20%削減でき,現在も維持しています。
都市ガスは冷暖房用です。中間期(春秋)における外気の利用,徹底した温度管理,仕事の効率化による時間の短縮などで,同じく60%削減を維持しています。
本業を通じての取組み
①環境関連訴訟
公害環境裁判に取り組むことが弁護士志望の動機だったので,上関原発スナメリ事件,永源寺第2ダム訴訟,奄美ウミガメ砂利採取差止請求訴訟など自然環境保護,公害対策などの訴訟を手がけています。
②弁護士会の公害環境委員会活動
日本の弁護士会は,公害の時代から被害者救済や公害環境問題の是正のための提言をし,シンクタンク的な役割を果たしてきました。
公害環境裁判に取り組むだけでなく,弁護士会を通じて新しい立法や政策の提言など予防的な活動をすることも大切にしています。
③環境関連情報の発信
事務所や弁護士の活動,近況,取り組んでいる環境問題などを盛り込んだ事務所ニュース「MyStyle」を年2回(1月,7月)発行し,希望者に無料で送付しています。
また,不定期でメルマガによる環境問題の情報発信を行っています。
購読者を増やすことが社会貢献につながります。
④大阪府中小企業家同友会の活動
大阪府中小企業家同友会の環境部会は2004年から続いていますが,現在,幹事長として環境経営見学会,環境セミナー,エコフェスティバル(環境レポートコンテスト),EA21認証取得スクールの開催など企画・運営を中心的に行っています。
環境経営見学会では, 主にEA21認証取得した企業を訪問し,優れた点を学び,課題となっている点などを討議することにより受け入れる側にも有意義な見学会となっています。
⑤環境NPOとの連携
土壌汚染対策コンソーシアムに参画し,一般向けセミナーで土壌汚染訴訟の判例等を紹介しています。
土壌汚染問題は一旦引き起こすと将来にわたって生物への影響が懸念されます。
講演等を通じて土壌汚染問題への関心を高め,汚染の予防と汚染があった場合の早めの対策について,認識を高めていくことが重要と考えています。
今後の課題
オフィスでの環境負荷低減活動はほぼ現状維持となり,引き続きグリーン購入を可能な範囲で推進して行くことになります。
一方,本業を通じての取組みはまだまだやるべきことがあります。“ 「環境経営」で日本の中小企業を元気にします!”を経営理念に掲げ,地域経済と地域環境の相乗効果を足元から実現する弁護士業をめざしていますが,従来の訴訟型スタイルから,少しずつ模索し,形が見え始めたところです。
審査人から一言
法律事務所のEA21認証取得第1号として,お手本となる環境経営を実践されています。
事務所内での環境負荷低減活動もやれることはどんどん実施し,仕事量や従業員数の増減にかかわらずエネルギー負荷は増加させないレベルを維持しています。
また,本業に関わる取組みも待ちの姿勢ではなく,積極的に外に出て弁護士団体,中小企業家同友会,環境NPO等を通じて社会貢献することで,これらの活動がやがて事業の発展にもつながる,いわゆる環境経営を実践されている好事例といえます。
今後も率先垂範を期待しています。