シェールガスの輸入と環境問題

オーエスラボ株式会社 代表取締役


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東京電力と中部電力との統合会社が、シェールガスを米国から初輸入したことは、ご存知だと思います。今回はLNGにして約7万トンを輸入しましたが、2019(平成31)年1月までに最大70万トン輸入する計画のようです。日本にとって、エネルギーの安定確保の点で喜ばしいことのようですが、化石燃料を当てにした発電(今回は、中部電力上越火力発電所で燃料に使用)が拡大することになります。シェールガスの開発においても、環境破壊の懸念が払拭された訳ではありません。

米国のトランプ大統領にとっては、日米経済取引の発展と米国のシェールガス産業開発の面から、望むべき点とみられます。しかし、こうした動きは、トランプ大統領の「パリ協定」への取組み軽視(協定離脱も考えられる)が、はっきりとみて取れます。本シェールガスの取引は、安倍総理とオバマ大統領との合意のもとで進められていることですが、シェールガス開発には、オバマ政権時代に、環境面からブレーキが掛けられた経緯があります。しかし、トランプ政権では、開発促進が打ち出されています。

マスコミもそうですが、何故、地球温暖化問題について、広く人々に認知させる情報発信をしないのでしょうか。私は、日本の公害問題の某専門家(1960年代初期の話として、当人は、すでに他界されています)から、四日市の大気汚染がひどいので、調査・研究を手掛ける必要性を、時の厚生省官僚に進言並びにその研究調査費のりん議申請をしたところ、当該上司は、「先生、調査・研究も良いですが、そもそも大気汚染で何人の人が死んだんですか」と返され、予算が付かなかったことを、もう時効に値するでしょうから、と話を聞かされ驚いたことがあります。どうでしょうか、公衆衛生や環境汚染の専門家と政府官僚とのやりとりに、こうした事実があった事を聞いて、私はショックを覚えたました。

 

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日本は、決して環境(公害)先進国と言える国ではないと、私は思っています。日本の環境改善は、1970(昭和45)年の公害国会で生まれた、多くの重要法案によるものであることは、間違いないことでしょうが、これらの法律が誕生する背景に、日本という国が真剣に問題認識を持っていたものではないと言うことを知って、自分の国を見る目が変わりました。

私が知るところでは、当時、日米貿易摩擦問題(繊維分野)で、日本は米国から厳しく貿易改善(米国の貿易赤字)を求められていました。1968(昭和43)年、当時のニクソン大統領が、環境教書で公害を垂れ流し、資本主義経済社会に乗り込んできた国がある。極めて遺憾とのメッセージが、世界に発信されました。このメッセージを受けて日本政府は公害改善を急ぐ必要性に追い詰められ、これが、公害国会の開催、そして環境庁誕生の背景になったと、私は理解しています。前述しました環境衛生や環境汚染の専門家が、調査・研究費を申請し、却られた話と一致すると思いませんか。これが日本の実態です。

しかし、日本の良いところは、一旦、方向が定まれば、それに突き進むことができる国で、見事に公害問題を克服しました。でも、どうでしょうか、自主性や主体性がある国家と言えるでしょうか。地球温暖化における京都議定書における動きも、日本での開催で、良いところを見せたい、そんな背景で生まれたもだと、私はみています。中国はともかく、米国を引き込めなかった京都議定書は、労多くして益少なしでした。途中、リーマンショックや力のない政権の誕生、加えて3.11という未曾有の自然災害と言った事件が、京都議定書の約束年の期間に起こりました。アンラッキーと言えば、アンラッキーでした。

そして、今般の米国トランプ政権の誕生です。かっこ良かった米国と中国との「パリ協定」批准も、水疱にきしそうです。
こうした、極めて大きなパラダイムのシフトが起ころうとしている時に、日本は世界にどのような貢献が出来るのでしょうか。こうした視点に立った日本のリーダーの登場を期待したものです。主体性に欠ける国家、それが戦後の日本の姿のように思えるのは、私だけでしょうか。そして、今も変わる気配がない。寂しいことです。

この記事の著者
谷 學

谷 學

オーエスラボ株式会社 代表取締役
環境事業支援コンサルタント・経営士・環境経営士。元グリーンブルー株式会社代表取締役。日本の公害対策の草創期より環境測定分析の技術者として、環境計量証明事業所の経営者として、環境汚染の改善及び業界の発展のために邁進。2007年には経済産業大臣より計量関係功労者表彰を、2013年には経営者「環境力」大賞を受彰。50年にわたる環境問題への取組み実績を持つオピニオンリーダー。

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