【参考情報】COP21開催中のパリの様子(2)

東北大学 東北アジア研究センター中国研究分野 教授


東北大学明日香です。パリ状況シェアです。

 

まず29日(日)にリパブリック広場で「人間の鎖」をしていた人たちが暴徒化して数十人が逮捕されたという内容の記事が日本でも流れていた思います。ですが、その場にいた人の話によると、非常事態宣言によるデモ禁止に反対する専門的な(黒い戦闘服を着た)反政府暴力主義者(?)のような人たちが投石などをして大量に捕まったようです(人間の鎖に参加して、かつ逮捕された人は実際には多くなかったようです)。

 

なので、「気候変動対策を訴える人たちが暴徒化して警官隊と衝突」という日本のメディアのフレーミングは少々ミスリーディングだと言っていました。

 

http://www.cop21.gouv.fr/

http://www.cop21.gouv.fr/

 

前のメールで書き忘れたテレビですが、日曜日(29日)は朝からどのテレビ局もCOP関連の話をずっとやっていました(と言っても、パリは、いわゆる地上派のテレビ局の数が日本の半分くらいで、かつテレショッピングが多いです)。

 

その中で世界中の首脳が来たということもあると思いますが、フランス2という放送局(一応、国営の総合テレビ局)が、専門家の対談や会場の様子などを午前中ずっと流していました。

 

月曜もかなり多かったのですが、さすがに水曜日(2日)はCOP特番みたいのはどこのテレビ局もなかったです。中身で面白いと思ったのは、テレビ局のレポーターが「再生可能エネルギーに比べた原発の相対的な発電コストはどんどん高くなっている」と現地からのレポートの中で話をしていたことです(たぶん、どこかの国と違って、そういうことをサラっと言っても問題ないのだろうと思います)。

 

新聞も、水曜日(3日)はさすがに一面でCOPを取り上げいるものは少なかったです。

 

ただ、le Canardという風刺やすっぱ抜きで有名な新聞の一面での「オランド:私は気温と失業率を同時に下げることはできない」という見出しが目を引きました(元々左派系の新聞というのも少しあるかもしれません。オランドが本当にこれを言ったのかもよくわかりません。ただ、にわか環境派になったオランドを皮肉っているのは確かです)。

 

Le Monde紙も、今日も4面まで気候変動関連でした。中身は、1)ボランタリズムの気候サミット、2)ビル・ゲーツが再生可能エネルギーに大きな投資、3)アフリカを忘れるな、4)ベルギーが化石賞を取った、などでした。

 

(交渉ではない)会議場の方ですが、イギリス気象局のサイド・イベントで「永久凍土と窒素の温暖化効果(フィードバックも含む)を考慮すると2度目標達成に残されたカーボン・バジェットは十数%減る」「アフリカの方が西欧よりも年ごとの温度変化の振れ幅が小さいので温暖化を実感しやすい(ロンドンなどは普段より暑い夏の後に急に冷夏が来たりするので暑かった年の夏の暑さを忘れてしまう)」「すでにヨーロッパでは50年に1回の割合で起きるレベルの熱波が5年に1回の割合になった」という話が最新の気候科学という面から興味深かったです。

 

今回のCOPは今までの数値目標を決めてきたCOP3やCOP15と違って、数値目標自体はもう出ています。で、数値目標の会期中での差異化(数字を上方修正すべき国の上方修正の実施)自体は難しいのだとは思います。

 

ただ、コミットメントの公平性という意味では、排出削減数値目標の公平性に基づいた差異化ではなくて、コミットメント全体の差異化(例:先進国の資金や技術移転の実施状況をモニタリングさせて報告させて皆でレビューするような仕組みを入れる)といった細かいけど重要ところが差異化や公平性を巡る戦いの前線となっているようです。

 

各国の排出削減数値目標の不公平性に関するnaming and shaming(「あんたの国の目標は低いからずるいぞ」という指摘の仕合い)は、いつどのような感じで本格化するのはよくわかりません。

 

ただ、Ecoequity やChristian aidなどは報告書を出したりして積極的になりつつあります。ただ、彼らの方法論だと歴史的責任が入るのでかなり先進国に厳しくなり、その分、少なくとも先進国にとっては現実感が薄くなってしまうという問題があります。

 

一方、もう少し中立?なClimate Action Trackerは「今まで方法論に対する具体的な批判はもらってない」と言ってました(Ecoequityから中立すぎるという批判はあったそうですが、日本からの最近の批判に関しては具体的な中身を教えてほしいということでした) 。

 

「もう排出削減の数値目標はあまり関係ない」という議論もあります(naming and shamingはあまりしなくても良いのでは?という議論です)。その理由の一つに、「世界のお金の流れが実際に変わりつつある」というのがあるかと思います。いわゆる化石燃料関連会社からのDivestmentや座礁資産(不良資産:Stranded asset)の話です。

 

あまり楽観的になりすぎるのは良くないと思いますが、その関連のサイド・イベントや話はけっこう多く、そういうのは世界でも日本でもこれからますます多くなると思います。

 

最後は、すでにご存じの方も少なくないと思いますがBBCが取り上げた各国首脳(安倍首相を含む)や企業をおちょくっているコラージュです(パリの街角で実際に掲げられていた「正式な」意見広告です)。
http://www.bbc.com/news/world-europe-34958282 (笑えるような笑えないような…エールフランスのは笑えます)

 

これもおまけです。CAP-manというインベーダーゲームのようなゲームです。すんごくよくできてます。
http://www.cap-man.net/

 

以上ご参考まで

 

 

この記事の著者
明日香 壽川

明日香 壽川

東北大学 東北アジア研究センター中国研究分野 教授
(あすか じゅせん) 東北大学 東北アジア研究センター中国研究分野 教授 東北大学 環境科学研究科 環境科学政策論 教授(兼任) 東北大学 文学研究科 人間科学専攻 科学技術論講座 教授(兼任) (財)地球環境戦略研究機関(IGES)気候変動グループ・ディレクター 1986年 東京大学大学院農学系大学院修士課程修了(農学修士) 1989年 欧州経営大学院(INSEAD)MBAプログラム修了(経営学修士) 1996年 東京大学大学院工学系研究科先端学際工学専攻博士課程単位取得退学(2000年、博士号(学術)取得) スイス実験外科医学研究所研究員、(株)ファルマシアバイオシステムズ管理部プロジェクトマネージャー、電力中央研究所経済社会研究所研究員などを経て1997年から現職。ほかに朝日新聞アジアネットワーク客員研究員、京都大学経済研究所客員助教授などを歴任。第32回山崎賞受賞(2006年11月25日)

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