〜高効率貫流ボイラーシステムと遠隔監視技術を用いたボイラー事業展開と省エネ・環境保護の推進〜
依然として経済成長が続く中国だが、発展に伴い省エネ・スマートエネルギーへの取り組みも活発化している。では具体的にどのような施策が進んでいるのか。中国市場での積極的な展開を行っているボイラーメーカーの三浦工業の事業から、その現状を紐解く。
筆者 児島 好宏
(この記事は弊社発行媒体「日中環境産業 」(2013年11月号)より転載しています。)
三浦工業の会社沿革
三浦工業(株)は1993年5月に外資系ボイラーメーカーとして中国上海市に工場を設立し、GB規格のボイラー製造許可証を取得した。当時は独資での設立が認められず、上海ボイラー研究所との合弁で上海鍋炉有限公司としてスタートした。当時は各地域での総代理店制度を採用し、ボイラー研究所による政府系人脈を活用するとともに、日本製の信頼できるボイラーを武器に、初年度から合弁解消までの間、日系企業を中心に多くのご採用をいただいた。
1997年に起きたアジア金融危機では日系企業の投資が激減し、当時日系企業の比率が80%であった当社の販売にも大きな影響が及んだ。これを契機に販売戦略をシフトし、金融危機後は中国企業への拡販を進めた。2004年に上海万博開催が決定し、工場移転を契機に合弁を解消し、当社の独資で2006年に蘇州園区に三浦工業設備(蘇州)有限公司を設立した。新工場建築とGB規格のB級ボイラー製造許可(圧力25kg/cm2以下・容量制限無)を取得し新体制でスタートした。
2007年には上海鍋炉有限公司を吸収合併し、営業・メンテナンス・技術スタッフを擁した、日本のビジネスモデル展開の体制が整った。営業部門では省エネ・環境改善提案を、メンテナンス部門では電話回線を利用したオンラインメンテナンスを中心に、試運転・保守点検・修理業務をお客様ダイレクトにご提供している。
中国のボイラー市場
1.中国のボイラー市場と動向
中国のボイラー設置状況は、毎年新工場の建設により増加傾向が続いており、今後もその傾向は変わらないと考えられる。2011年ではボイラー設置総数は60.73万台で、蒸気ボイラーは約45万台である。燃料は約8割が石炭だが、2007年から北京をはじめ各地域の都心部より、石炭ボイラー使用禁止区域の設定が積極的に推進され始めた。これは、CO2削減と環境面を考慮した政策がスタートされたためである。
2.中国のボイラー設備
現在約45万台あるとされる中国の工業用ボイラー設備の概要は以下のとおりである。ボイラーは煙管式が主流を占め、蒸気の最大負荷以上の大きな能力のボイラーが、予備缶を含めて設置、運転されている。したがって、運転効率は低く日本の蒸気システムに比べて最大30%もの改善の余地がある。また、依然石炭焚きボイラーが多くを占めており、硫黄酸化物、窒素酸化物等大気環境負荷が大きく、対策が望まれる。石炭ボイラーをミウラのガス焚きボイラーに変更した結果の環境改善例を表に示す。技術監督局より標準ボイラー室証書と省エネ削減奨励金85万元、環境局より環境奨励金100万元を授与された。
3.中国の工業用ボイラーに関する省エネ・環境保護への取組み
中国においては第11次5カ年計画を受け、中国国家特種設備安全監察局のエネルギープロジェクトに関し、工業ボイラーに関する以下の目標値が設定され、実施に向けて具体的な取組みが行われている。
①2008年”3つの万”省エネルギープロジェクト
・1万台のボイラーの省エネ改造の取組み・10万台のボイラーの水処理が基準に達する活動
・20万名のボイラー作業員への知識訓練
②2009年”4つの5”省エネルギープロジェクト
・5万カ所のボイラー室の省エネ管理基準活動
・50%以上の工業ボイラー(4t以上)水処理基準
・5、000名の省エネ監督と能率テスト員の省エネ知識の訓練
・5項以上の省エネ新技術の応用促進
③2010年”4つの1”省エネルギープロジェクト
・1、000台既設石炭焚き工業ボイラー運転効率快速測定方法および応用試験箇所の設置
・100個安全および省エネ管理モデルボイラー室の設置
・10個ボイラー設計資料の省エネ審査試験箇所の設置
・10項特種設備省エネ新技術の応用モデル事例
高効率小型貫流ボイラーシステムと遠隔監視技術
当社では前述のように効率が低く、環境負荷も高い中国のボイラーシステムの省エネと環境保護を図り、ユーザーが安心して使用できる信頼性の高いボイラーシステムとして、小型貫流ボイラーおよび遠隔監視システムの提案を進めている。ボイラーの省エネは、ボイラーの瞬間効率(カタログ表示効率)ではなく運転効率をどう高めるかで、燃料消費量に大きく影響する。過去の分析データから中国では稼働率が低いボイラーが多く、当社が開発した貫流ボイラー多缶設置システムが大いに役立つと判断できる。
よりよいシステム提案を実施するためには、負荷分析が必須となる。負荷分析は、現在稼動中のボイラーの流量計と圧力計にセンサーを取り付けボイラー稼動データを集計し、貫流ボイラーに置き換えた場合のシミュレーションにより省エネ・環境改善効果が出るボイラー容量と台数の選定を行う。中国の法律では、すべてのボイラーに対してボイラー技術者が必要になっているが、現状のボイラー技術者は省エネ意識が低く、技術レベルも日本に比べると高くないのが現状である。そのため高効率ボイラーと高効率システムの維持管理が重要な要素になってくる。
当社は日本で培ってきたオンラインメンテナンスシステムを新開発ボイラーに搭載することで、お客様に安全と安心を供給できる体制をとっている。お客様はボイラー回線専用の電話回線を1回線準備するだけで、当社がパソコン画面で情況確認と各種データ収集を行うことが可能になり、継続管理することで部品の消耗度・交換時期などが診断でき、毎月月報として、熱管理データや故障状況報告と合わせてお客様に提案が可能となり、部品を先行交換することでボイラーの故障率の低減と高効率維持が可能になる。
ミウラの省エネ・環境保護推進
当社では中国の工業用ボイラーの省エネと環境保護推進に対し、高効率ボイラーシステム、遠隔監視システムの提案の他に、第3回・第4回日中省エネ環境フォーラムでは中国特殊設備研究院、大連ボイラー研究所との交流を行い、技術協力を推進した(写真5)。また現在では、この成果を受けて各地域の技術監督局との交流が始まり、南京・広州・西安・杭州・蘇州の地域で個別に技術協力調印を実施し、各地域にあった省エネ環境技術の提案を実施している。
①水処理監視技術の提供
・硬度漏れ、溶存酸素、次亜塩素の自動監視装置の適用と普及
②省エネ診断技術の提供
・ボイラー効率・負荷分析に関する技術講
③省エネ実験室への協力
・台数制御シュミレーションモデルおよび高効率貫流ボイラー、高度水処理装置の提供
④ボイラー遠隔監視装置の開発と普及
・既設ボイラー用の遠隔監視装置の開発と普及
⑤ボイラー取扱者教育への支援
・講習会テキストの作成と講師派遣今後も工業ボイラーの省エネ・環境改善の技術協力は積極的に取り組んで、省エネ・環境改善で中国でも社会貢献したいと思っている。