−三重県発信、森のエコステーション活動のカーボン・オフセット−
1.「森のエコステーション」システム
私ども環境思考は、日常生活で排出される古紙やアルミ缶などのリサイクル資源を、効率的に集め輸送する手段を提供することにより、環境負荷を低減して持続的な社会を作ることを社是として活動を続けてきました。
そのために、輸送効率に優れた「コンテナによるリサイクル資源収集システム」を作り、さらにこれをIT化した「エコステーション」を三重県内から始め、現在は全国的に展開しています。
もともと、古紙回収業者を営んでいましたが、単価競争の厳しい業種であるために、環境にやさしく経済的効率のよいしくみを見つけ出す方法としてISO14001を取得し、独自の回収方法を考えさらに進歩していく段階で、現在のシステムにたどり着きました。
このシステムは、三重大学やNPO法人との共同研究により、常に環境負荷の算定を行い温室効果ガスの排出を極力少なくする方法を提案するものです。
筆者:ECOLOGライター((株)環境思考取締役 水谷 昌子)
(この記事は弊社発行媒体「環境パートナーズ(2014年4月号)」より再編集して掲載しています。)
地産地消の観点から、なるべく地域の森林吸収オフセットクレジットを活用し、行政・民間・一般消費者と協働することにより、今までの方法では削減しきれなかった「資源回収の輸送」と「資源を持込むお客様の移動」に伴う温室効果ガスの排出を、自動的にカーボン・オフセットするしくみを作り上げることができました。
このしくみは、リサイクル資源の持ち込みでお客様に発生する有価部分のポイント(環境ポイントという)をお客様のICカードごとに自動的に計量・蓄積し、資源回収の輸送に伴う温室効果ガス排出分はシステムデータ管理をする当社が、また、資源を持ち込んだお客様の移動の排出分はそのお客様がポイントの一部を用いて自動的にカーボン・オフセットするしくみです。
タッチ方式のアンケート画面で該当するボタンにタッチして、この情報で、資源を持ち込んだお客様の移動の排出量が見える化でき、持ち込んだ古紙・アルミ缶の重量によって自動オフセットが完了できます。
森のエコステーションにお越しいただいた手段「わざわざ」「ついで」によりオフセット率が異なり、「わざわざ」ボタンにタッチした人は、環境ポイントから15%を、「ついで」ボタンをタッチした人は、7%がオフセットポイントとして差し引かれます。
このしくみにより、森の「オフセットクレジット創出プロジェクト」と地域の「生活者」をむすび、気軽にカーボン・オフセットすることができるようになりました。
単なるポイントシステム、環境負荷の低減手段であることを超えて、地域社会・人・自然と深くつながりが持てるプラスの効果をもたらし、次のようなメリットが広がりつつあります。
①自分の資源持込み量や温室効 果ガスの排出量の認知
②三重県大台町の森林整備や地 域振興、地元商店などで使える 買い物券への交換、日本赤十字 社を通じた被災地への寄付活動 などのポイント利用
③植林体験イベントや子供たち への山の学習体験の機会提供に よる環境マインドの育成
④環境ポイントのほか、協賛企 業の協力を得て、地域の環境美 化活動等のイベントでもポイントが発行することができ、近い 将来、地域通貨としての利用が 見込まれます。
リサイクル資源は日々の生活から恒常的に出るものであるため、このカーボン・オフセットの取組みは継続的で持続性の高いものです。よって、地域の皆様のカーボン・オフセットも継続的となり、 「オフセットクレジット創出プロジェクト」へ継続的に貢献することができます。
環境を守ることは一人の力ではできないことであり、人との関わりを大切にし、対話をしながらじっくりと進めていくことが必要です。これからも、森のエコステーションにお越しの地域の皆様と接しながら地域とカーボン・オフセットの取組みを支援する事業を展開してまいります。
2.今後の展望
過去の実績により、1店舗当たり3、000人の方が利用されています。自動オフセット端末利用のお客様を増やしながら、まずは、1万人で100tのカーボン・オフセッ トを目標にし、さらなるステップに進み拡大していくことを目標にしています。
また、地元三重県下で森のエコステーションの認知度も高まり広がりを見せて行く中、県外でも静岡県・山梨県・山形県でこのしくみにより、森のエコステーションとして活動しています。
活用しているオフセット・クレジットは、被災地の森林応援としまして、岩手県様(岩手県県有林J-VER)、宮城県様(宮城県県有林J-VER)と売買契約を締結し、少しずつ広がりを見せてきています。ただ、クレジットを購入するだけではなく、身近なところで広く知っていただき活用していただけるしくみになっています。
ぜひとも地域の皆様・企業の皆様に参加をいただくことを深く願っています。最後になりましたが、今回初めて第2回カーボン・オフセット大賞に応募させていただき「環境大臣賞」を受賞することができました。社内一同、たいへん喜んでいます。関係者の皆様、誠にありがとうございました。今後は、この責任の重さを受けとめ、より一層、皆様とともに歩ませていただきシステムの構築に頑張ってまいります。