水・土壌
2016.05.27

日本が誇る浄化槽という優れもの

環境文明21共同代表 / (株)環境文明研究所代表取締役所長


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私たちの家庭からでも事務所からでも、旅館・ホテルからでも、トイレや台所、風呂場などから生活排水が出てくる。それを処理する方法は、大きく二つある。

一つは、公共下水道を通じて処理するもの。もう一つは、「浄化槽」と言われる生活排水処理システムで処理するものだ。

下水道は、言うまでもなく、地下に長い管渠を埋め、その管渠を通じて多数の家々や事業所、工場などからの排水を集め、最終処分場で処分し、川や海に浄化された水を流していく。しかし、これは相当大がかりな公共事業となり、もちろん時間も掛かるし、作った後も維持管理にかなりのお金が掛かる。

一方、浄化槽というのは、公共下水道が敷設されていないところ、典型的に言えば都市の郊外、農村部、そういったところで、各戸の庭などに個別に埋設して、そこで個別に処理をし、排水を流すシステムだ。これは、数戸集まって処理することも可能だが、原則として、発生源の近くで分散して処理する生活排水システムだ。

私は30年程前、この浄化槽システムを発展・普及させる行政を担当した。当時、厚生省の環境整備課というところで、これのための全国システムを作る作業を3年間ほどやり、これがなかなか優れものであることを実感した。

どう優れているのかというと、コンパクトな施設で、汚いトイレ排水なども十分にきれいに処理が出来るし、下水道と違って長い管渠がいらないので、道路を掘り起こしたり、事業に多額の費用が掛かったりしない。さらに、規模が小さくて済むので、維持管理にも多額の費用がかからず、財政に優しいシステムである。かつては安かろう悪かろうと言われた時期もあったが、合併浄化槽の開発など技術の発展で、処理効率は公共下水道に決して負けるものではない。

この施設は、日本では人口が減少局面に入り、地方の都市で高齢化や過疎化が進む中では、環境にも地方財政にもやさしい優れものの生活排水処理システムと言える。

今、世界を見ればアジア、アフリカ、中南米など、人口が増加し都市化が進み、生活排水処理に困る沢山の地域がある。国連では昨年9月に「持続可能な開発のための2030アジェンダ」(いわゆるSDGs)が採択され、その中で「すべての人々の水と衛生の利用可能性と持続可能な管理を確保する」ことが課題とされている。私は、日本で開発された浄化槽システムこそ、この課題に応えられる有力なシステムであると確信している。

日本には、和食、日本酒、カラオケ、柔道、空手といった優れものがいくつもあり、世界に広がっている。同様にこの生活排水処理システムも、日本だけで使われるのはもったいない。海外でも大いにその力を発揮してほしいと思っている。

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画像出典:http://www.koumeisha.com/septictank/page5.html

この記事の著者
加藤 三郎

加藤 三郎

環境文明21共同代表 / (株)環境文明研究所代表取締役所長
1939年11月東京生まれ。66年東京大学工学系大学院修士課程を修了し、同年厚生省入省。その後環境庁の設立に伴い、主に同庁にて公害・環境行政を担当。90年同庁地球環境部の初代部長に就任。地球温暖化防止行動計画の策定、地球サミットへの参画、環境基本法の準備などを経て、93年退官。環境文明研究所を設立するとともに、NGO(現在の「認定NPO法人 環境文明21」)を主宰する。 【兼職等】 早稲田大学環境総合研究センター顧問、日刊工業産業研究所グリーンフォーラム21学界委員、プレジデント社環境フォトコンテスト審査委員長、毎日新聞日韓国際環境賞審査委員、日立環境財団理事、損害保険ジャパン環境財団評議員など。

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