インタビュー
2015.12.30

地球のために仕事をする <第2回>


スクリーンショット 2015-12-30 23.32.49

試験所認定取得から日本の技術力を世界へ

今回は、環境分析をはじめさまざまな測定・分析事業を展開する“The Knights”内藤環境管理㈱(本社・さいたま市、URL:http://www.knights.co.jp) の環境分析部化学分析箇所主任研究員・竹下尚長さんにお話を伺いました。

*   *   *

内藤環境管理㈱の主任研究員、竹下尚長さんがここ数年取り組んでいるのが、RoHS指令に関わる電気電子機器などに含まれる金属成分の分析ということでした。

竹下さんにとって、これまでの工場排水や飲料水の分析に加えての、新たな技術への挑戦でしたが、同時に会社としても新たな事業の柱として注力することで、 今ではお客様の拡大につながる事業になっているということです。この新たな取組みは、どのように進められたのか、その背景には何があるのか。 こうした視点から、竹下さんの仕事に迫ってみます。

筆者:ECOLOGライター(本橋 恵一)
(この記事は弊社発行媒体「環境パートナーズ(2014年6月号)」より再編集して掲載しています。)

 

欧州RoHS指令への挑戦

竹下さんがこれまでの水質や土壌の分析に加えて、製品の分析に着手したのは2005年でした。 竹下さんの担当は、さまざまな媒体に含まれる金属成分の分析です。 主に、カドミウム、鉛、水銀、六価クロムといった、人体に有害な重金属が対象です。 いずれも、廃棄されると環境汚染につながる物質です。

とくに欧州では電気電子機器を対象とした規制として、前述の4種類の重金属とPBB、PBDEという有機化合物の6種類について、規制がかけられています。 これがRoHS指令です。 当然、日本のメーカーも欧州に製品を輸出する以上は、この規制をクリアする必要があります。 そこで内藤環境管理としては、この新たなニーズに対応すべく、いち早く体制を整えることにしました。

とはいえ、排水のような液体ではなく、製品の分析は、まったく未知の領域でしたので、新たな分析方法を確立する必要がありました。 現在でこそ、IEC62321で定められた方法がありますが、これが確立されたのは2008年のことです。

* 課題は、分析方法の確立だけではありません。輸出する製品が対象なので、国際規格に準拠することも求められます。 そこで、ISO/IEC17025の取得をめざすことになります。 すでに取得していた品質管理の国際規格ISO9001に加えて、必要な技術についても適格であることが保証できて取得できるものでしたが、 それでも必要な規定書・手順書などの書類の作成や、技術的な測定の不確かさ(結果のばらつき具合)を測定し、改善していく取組みなどで、取得までに1年かかったということです。

こうした努力によって、RoHS指令が施行された2006年7月とほぼ同時期には、内藤環境管理はRoHS指令に関わる測定分析に対応することができていたということです。 現在一般的に、分析手法は、蛍光X線分析によるスクリーニングと、分析対象(部品・基板などの素材やはんだなど)を細かくして酸で溶かしてICP等で行う精密分析です。 精密分析において、分析対象を確実に溶かす前処理は非常に重要で、素材と適合する酸の組合せは、企業秘密とのことでした。

 

Type of test認定へ

RoHS指令への対応の事業化へ向けて取り組んだのは、上司と竹下さんだけではありません。 その中には営業部門のメンバーも含まれました。新たな分析サービスに市場があるのかどうか、彼らが全国の電気電子メーカー、部品メーカーをまわってくれました。

その結果、これまでの主なお客様だった中小の部品メーカーだけではなく、製品を組み立てる大手メーカーからの需要も開拓できました。 分析コストの負担の面でも、輸出元、あるいは消費者への信頼という面でも、大手メーカーのニーズは高かったということです。

* お客様が増えれば、さまざまな要望が出てきます。 しかし、新たな試験を追加するごとに拡大申請をしていては、迅速に要望に応えることはできません。 そこで、ISO/IEC17025の認定範囲に「試験の種類による認定(Type of test)」を追加することにしました。

これは、「管理者が方法として妥当性を有すると判断」したうえで、次回審査の際認定機関に届出すれば、認定範囲として採用が可能となる制度です。 そして、その管理者の資格を取得することになったのが、竹下さんでした。 管理者の資格取得も簡単なものではありません。数回に及ぶ面接、所属学会や論文などキャリアの審査などを経て、ようやく認定されたのが、2011年6月でした。

これにより、お客様の要望に応じて、適宜認定範囲の追加が可能となり、タイムリーな試験サービスを提供できる体制が整ったことになります。 また、認定機関(公益財団法人日本適合性認定協会:JABおよびILAC/MRA(国際相互承認))のロゴマークを表記した、国際的に通用する証明書の発行が受けられることにもなります。

* 竹下さんが環境分野の化学分析の仕事を選んだきっかけは、環境分野の事業がこれから成長すると思ったから、とのことでした。 また、子どもの頃から自然に親しんだことや、科学実験が好きだったことも影響しているかも、ということです。

入社当初は、BODなど生活環境項目の水質分析などを担当していましたが、10年前にこの分野で後輩が育ってきたことを機に、金属分析という新しい分野に挑むことにしたということです。 お客様の要望は次々と増えていきます。しかし竹下さんは新しい仕事を通じて新しい発見があること、そして分析そのものの楽しさに加えて、お客様に喜んでいただけることが、 やりがいにつながっているということでした。

次の展開として考えているのが、欧州のEN71-3指令(玩具指令)とういものだそうです。 現在、8物質が規制されていますが、7月には19物質に拡大されます。 さらに、この指令に限らず、規制は拡大する方向ですから、対応する技術の開発にも休むひまはないかもしれません。

この記事の著者

あわせて読みたい

  先日5月6日に、一般社団法人日本環境測定分析協会から、「名誉会員証」が届きました。同協会は、1974(昭和49)年に当時の通商産業省と環境庁との共管のもと誕生した社団法人で…
  地球温暖化対策を真剣に進めるその背景に、とんでもない落とし穴があるとするなら、私たちはどのような行動をとるべきでしょうか。この後、「パリ協定」「ESG」「座礁資産」、さらに…
はじめに(「パリ協定」発効の行方) 2020年以降の地球温暖化対策の国際ルール、「パリ協定」の発効が有力となった2016年11月4日、日経朝刊9面には「脱炭素時代 幕開け」という大きな文字が、見…
1.はじめに 公害(環境)問題の解決に取り組んできた者にとっ て、1972 年に出版された「成長の限界[1]」の警鐘は、 強いショックとインパクトを与えたに違いない。同じ 年…
環境コミュニケーションズ