森林吸収クレジットを通じた、企業と社会の共有価値創造の実現


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グリーンプラスのミッション

まずグリーンプラスの事業内容のご説明の前に、ソーシャルビジネスを推進するミッションステートメントと、それを具現化するビジョンをご紹介したいと思います。

ミッションは「森林の恩恵を将来にわたって永続的に享受していくために、森林を適切に整備・保全し、山村の再生を行う」ことで、具体的には以下の3つのビジョンとなります。

参照:http://green-plus.co.jp/

ビジョン

①関わる人の生活の質を向上する
・山村の生活者が経済的インセンティブと活力を得られるように、森林の付加価値の商品化を推進する。
・企業や都市生活者が、生態系の一部として持続可能な行動をとるための気づきを提供する。
・山村の風景のみならず、知恵・伝統文化・祭礼など地域の多様性の維持発展に貢献する。

②森林の整備を推進する
・国内未整備森林の間伐整備を通じてCO2吸収量を増加し、地球温暖化防止に貢献する。
・地産地消のエネルギー利用や、付加価値の高いノベルティグッズ製作など、未利用間伐材の利用促進に貢献する。

③さまざまなレイヤーと協働する
・組織の歴史・理念・サイズなどを尊重しながら、自治体・企業・NPO・市民などさまざまなレイヤーの共有価値を探り、協働して地域づくりと一体となった森づくりを推進する。

どの事業に関しても、このビジョンを以って取り組んでいます。

 

国内森林の現状

国内の人工林は約1,000万haありますが、その多くが戦後の拡大造林による45年生から55年生のスギ・ヒノキ林です。これらの森林は、植林してから成長する間に、薪炭から化石燃料へエネルギー需要の変化や、安い外材の輸入などが影響し、材を伐り出して出荷しても割の合わない資源となってしまいました。

現在ではその多くが手入れをされることなく陽のささない暗い森となっています。 日本各地の林業を主な産業としていた山村では当然雇用が失われ、収入が減って行きました。

 

CO2吸収機能に価格がつく時代

地球温暖化が国際的な問題となっている現在、森林のCO2吸収機能が大きく注目されています。 これまで森林がCO2を吸収していても、山主にはとくに費用が支払われませんでしたが、日本の森林のCO2吸収機能を貨幣換算すると、年間1兆2,391億円と日本学術会議は試算しています(ha当たり約5万円/年)。

地球温暖化の原因が人為的なCO2排出によるものと明らかになった今、森林のCO2吸収機能は、企業などのCO2削減取組みに有償で提供する時代となっています。

 

環境省J-クレジット制度とは

この取引きに活用できるのが環境省のJ-クレジット制度です。 環境省では地球温暖化防止の目的で、前身となるオフセット・クレジット(J-VER)制度を2008年に立ち上げました。

旧制度から存続する森林吸収プロジェクトと呼ばれるものは、森林を間伐することにより増加するCO2吸収量を算出し、これをISO14065認証機関が第三者検証を行いクレジットが発行されます。 J-クレジット制度により創出されたクレジットは、低炭素社会実行計画の目標達成やカーボン・オフセットなど、さまざまな用途に活用されます。

 

排出権の自社開発

疲弊した山村の新たな収益源として、間伐など人為的整備により増加したCO2吸収量を環境省のJ-クレジットとして申請から販売まで行っています。 当社はCO2を吸収する森林を所有しておりませんので、森林所有権の取りまとめや日常業務の延長にある実際の森林整備やモニタリング作業は山村側の方と協働します。

山村側には負担の大きい申請業務とクレジット販売がクリアになり、お互いにシナジーあるアライアンスとなります。 林業といえば長期的なビジネスで保守性が重んじられる風潮があり、また一般的に地方の山村の方は外部に対して保守的です。

当社の申請・販売のノウハウと山村の森林を活用したこの新たなビジネスを始める際には、当社が山村の方々に信用いただくのと同時に、「排出権」という概念をご理解いただくまでに多くの時間を費やしました。

 

排出権売買を超えて

クレジットをご希望するお客様には、販売打合せのタイミングから森林にお越しいただき、枝打ちや間伐を体験してもらうなど、単なる排出権の売買に留まらず、 実際にお客様の排出するCO2をカーボン・オフセットしてくれる森林を多面的に感じていただきます。

こうしたステップを踏むことにより森林に関心を持っていただき、より長期的な森林との関わり方をご検討いただく下地作りが行われます。 これまでに100名を超える企業のご担当者様に森林体験をご案内させていただきました。

 

キャパシティ・ビルディング

企業のご担当者様が森林にいらしていただく際には、森林側の受入れ体制が重要です。 そこでどれだけ森林の実態を感じていただけるか、林業の実態をご理解いただけるか、山村の文化・伝統・習慣に触れていただけるか、周辺の自然豊かな観光資源に感動していただけるか。

これらの体験をよりよいものにして、お客様と山村の方々が、排出権売買を超えたプロジェクトのアイデア会議をより効果的に行えるように、山村側のキャパシティ・ビルディングを行い、 オーダーメイドに対応可能な受入れ体制を構築しています。

 

CO2の見える化業務

カーボン・オフセットは、お金で即、排出権を購入することではありません。 まず自社のCO2排出量を把握し、その削減努力を行い、それでも削減しきれないCO2についてカーボン・オフセットという手段を用いることと環境省ガイドラインにあります。

当社では、中小企業のオフィス・工場・店舗・通勤などについては、まずCO2の見える化としてCO2排出量の簡易測定と削減アドバイスをメニュー提供しています。

これらのメニューは、環境マネジメントシステム(以下、EMS)のエコステージ認証とともに、お取り組みされる中小企業のお客様に、最初のステップとしてご提案しています。

 

環境経営は目的でなく手段

社会にはすでにいくつかのEMSが存在しますが、大企業の下請会社などは取引先の要求によってEMSの取得自体が目的になっているケースが少なくありません。 当社では、EMSに段階的に取り組めるISO14001に準拠したエコステージ認証の取得をお客様に推奨しています。

エコステージ認証は、お客様の取組みレベルごとにステージがありますので、マネジメントの重要性を認識することから、マネジメントレビューを行いPDCAサイクルで回していくことで、EMSが目的でなく、 企業パフォーマンスの改善に役立つ手段であることをご理解いただきます。

 

コストのプロフィット化

中小企業のEMSはCSRと連動する事例が多いようです。 たとえばサステイナブルな生産体制を構築するのに、化石燃料のボイラーをバイオマス燃料のボイラーに更新する場合などは、投資回収に時間のかかる場合が多く、EMSの取組みがコストに感じられてしまいます。

当社ではこういった事例においても排出削減クレジットを創出する、新たな取組みについて申請からクレジットの販売までサポートしています。 排出削減プロジェクトはCSR側面で企業価値を向上させ、創出したクレジットを他社へ販売し投資回収期間を圧縮し、投資回収後は収益を生み出すプロジェクトとなります。

 

CSRからCSVへ

中小企業のCSR活動は、これまで企業経営コストとしての社会的責任の行使と捉えられていましたが、CSRとはそもそもどのような定義なのでしょうか?

フィリップ・コトラーは、「企業の社会的責任(CSR)とは、企業が自主的に、自らの事業活動を通じて、または自らの資源を提供することで、地域社会をよりよいものにするために深く関与していくことである」 といっています。

これはマイケル・ポーターの提唱するCSV(Creatingsharedvalue、共有価値の創造)と同様のことを指し示していますが、使い回されたCSRという単語よりもCSVという表現の方が、 CSRご担当者様には意味が通じやすいようです。

歴史のある企業では、平成以前の社会に求められていたものが高度成長であり、文明的な生活であり、サステイナブルでない開発に基づいていたため、 企業のCSR理念の再定義が追いついていないケースが多々見受けられます。

こうした時代、CSR担当者様には選択肢が大きく2つあります。 一つは、本業で蓄えた資源を新たなソーシャルビジネスへ投下することを、重大な責任を背負って社内プレゼンテーションすること。

もう一つは、その道のプロフェッショナルであるソーシャルベンチャーやNPOとパートナーシップを締結することです。

 

マーケティング・SP

これからは商品・サービスと社会の共有価値の創造を検討し、最適な接点でコミュニケーションを行う時代です。 マーケティング・SPご担当者様へは、平成以前の大量生産・大量消費というビジネスモデルから、持続可能なビジネスモデルへ、本質的な変革をサポートします。

国内森林とのつながりを活かせるなら木製ノベルティなども有効です。 また、販促費の一部を環境保護などに投入することで、ステイクホルダーの評価、とくに消費者からの共感を得て、売上を高めます。

 

社会との共有価値を創造

とくに現代ではサステナビリティと、社会との共有価値が創造できるかが問われる時代です。 永らく経済的インセンティブがなかった山村との連動を図り、消費者や山村との共有価値創造をご提案し、具現化するのが当社のミッションです。

今年から森では切り捨て間伐から搬出間伐が始まり、J-クレジットの元年でもあります。 世の中に低炭素化社会づくりの気運が高まるよう、これからも事業に邁進したいと思います。

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