ヒートアイランド対策技術分野における実証の経緯および概要


はじめに

環境省では、すでに市場で利用・販売されているが、環境保全効果等について客観的評価がなされていない技術について、第三者が客観的に試験を行うなどしてその効果を示すことにより、 それら技術の普及を図ることを目的として、環境技術実証事業(以下、ETV事業)を行っています。

本報では、建材試験センター(以下、当センター)が担当しているヒートアイランド対策技術分野(建築物外皮による空調負荷低減等技術) における実証の経緯および概要ならびに実証試験に関する内容について説明します。

20091026_01http://www.haseko.co.jp/hc/information/press/20091026.html

筆者:ECOLOGライター((一財)建材試験センター調査研究課 村上 哲也)
(この記事は弊社発行媒体「環境パートナーズ(2014年7月号)」より再編集して掲載しています。)

 

実証の経緯および概要

経緯

ETV事業は平成15年度から開始されました。 事業開始当初、3つの技術分野が設置されました。16年度には、新たに2つの技術分野が設置され、そのうちの一つがヒートアイランド対策技術分野でした。分野を立ち上げた初年度は、空冷室外機から発生する顕熱抑制技術を対象として、モデル的に実施されました。

その後、平成17年度にヒートアイランド対策技術分野における新たな対象技術の方向性が検討されました。 事業分野の選定は、「環境行政(全国的な視点)にとって、当該技術分野に係る情報の活用が有用な分野」とされており、環境省の「ヒートアイランド対策大綱2)」 および東京都の「ヒートアイランド対策ガイドライン3)」を踏まえ、実証ニーズに関する調査を行ったところ、当分野に関するニーズが多く出された4)、5)ことから、モデル事業として取り上げることとなりました。

分野名は、ヒートアイランド対策技術分野(建築物外皮による空調負荷低減技術)とされ、18年度からスタートしました。 当分野では、事業開始の前年度に日射遮蔽フィルムを実証対象技術とすることが決定6)していたため、平成18年度は同フィルムを対象にして実証を行いました。

その後、19年度には窓ガラス用のコーティング材、後付けタイプの複層ガラスが実証対象に追加されました。 20年度からは、分野名を「ヒートアイランド対策技術分野(建築物外皮による空調負荷低減等技術)」とし、屋根用の高反射率塗料(JISK5675(屋根用高日射反射率塗料) に規定される高日射反射率塗料に相当する技術)、高反射性の防水シートなどを対象に加え、実証を行いました。その後、ブラインド、瓦などの技術が加わり、平成24年度には15種類の技術が実証対象として掲げられました。

平成18年度から24年度までの7年間で、当分野の実証件数は350件となりました。なお、当分野における総実証数は、ETV事業全体の約7割を占めています。

 

実証の概要

当分野では窓ガラス用の日射遮蔽フィルムや屋根用の高反射率塗料など、建築物に「後付けで施工できる外皮技術」のうち、 空調負荷を低減させるなどしてヒートアイランド対策効果がある技術を実証の対象としています。

それらの空調負荷低減性能(冷暖房に要する負荷が低減できるか)や温度低減効果(室内の温度を低減できるか)を試験により求め、実証を行っています。 ここでいう「実証」とは、環境技術の開発者でも利用者でもない第三者機関が、環境技術の環境保全効果、副次的な環境影響、その他を試験等に基づき客観的なデータとして示すこと1)、と定義しています。 実証は、一定の判断基準を設けて、この基準に対する適合性を判定する認証とは異なるものです。

(1)実証試験方法
技術の種類が多くなったことから、平成24年度より実証対象技術を、窓用後付技術、屋根用後付技術およびその他の3つに分類しています。 いずれの技術も共通して、①空調負荷低減による環境保全効果および②効果の持続性を試験により求めています。

(2)実証試験結果
ここでは、代表的な2種類の技術の試験結果をまとめたものについて説明します。 窓用日射遮蔽フィルム 実証試験結果のうち、窓ガラス面の熱の伝わりやすさを示す「熱貫流率(U)」を縦軸に、日射熱を遮る度合いを示す「遮へい係数(S)」を横軸に示しています。

熱貫流率の値が小さいほど熱を通しにくく、遮へい係数の値が小さいほど日射熱を通しにくい状態を示します。 これまでに実証した技術の性能はさまざまで、遮へい係数を例に取れば、通常使用される窓ガラスよりも日射を約20%通過させるものから約90%通過させるものまで幅広く存在しています。

熱貫流率も同様で、ほぼ窓ガラスと同程度の性能を持つものから、1/3程度熱の移動を小さくすることができるものまで幅広く存在しています。

 (3)実証対象技術の近年の傾向について
近年における実証対象技術は、夏季のヒートアイランド対策効果の高い技術だけでなく、年間を通じた効果を見込める技術が増加している傾向にあります。 今後も引き続き製品の性能向上が期待されます。

 

ETV事業と環境技術の普及

平成21年2月には、当分野の技術のうち窓用日射遮蔽フィルム、屋根・屋上用高反射率塗料、屋根・屋上用高反射率防水シートの3種類がグリーン購入法に登録8)されました。 その結果、調達品目としての技術導入は増加し、世間からの注目を集めることとなりました。

近年、節電への関心の高さからもヒートアイランド対策技術の導入が検討されており、とくに窓用日射遮蔽フィルム(ウィンドウフィルム)の導入については、早くから各業界で検討が行われています。 これは、空調負荷を低減させることが節電となるため、注目を集めているものです。

節電の結果、ヒートアイランド対策がさらに進むこととなるため、さらなる導入の促進が期待されます。 技術の導入が容易である当分野ではありますが、どの程度導入が進んでいるかを定量的に把握するのは難しい状況です。 しかし、ETV事業において個々の技術を実証することにより、製品の性能向上に寄与するとともに、ヒートアイランド対策技術の普及へ果たす役割は大きいものと考えております。

 

おわりに

環境省の実施するETV事業のうち、当センターが運営する分野の事業の経緯および概要、ならびに実証試験に関連する部分等について紹介しました。 実証試験結果の詳細は、環境省ETV事業サイト9)および当センターのウェブサイト10)に掲載しております。

—文献等— 1)環境省:環境省環境技術実証事業、 http://www.env.go.jp/policy/etv/.
2)環境省:ヒートアイランド対策大綱、2008-03、 http://www.env.go.jp/air/life/heat_island/guideline.html.
3)東京都:ヒートアイランド対策ガイドライン.2009-07、 http://www.kankyo.metro.tokyo.jp/climate/other/countermeasure/guideline.html.
4)環境省水・大気環境局環境管理技術室:実証試験に対するニーズ調査結果の概要1/2、 http://www.env.go.jp/air/tech/model/w_heat18_01/mat02-1.pdf.
5)環境省水・大気環境局環境管理技術室:実証試験に対するニーズ調査結果の概要2/2、 http://www.env.go.jp/air/tech/model/w_heat18_01/mat02-2.pdf.
6)環境省水・大気環境局環境管理技術室:ヒートアイランド対策技術分野における新たな対象技術の方向性、 http://www.env.go.jp/air/tech/model/w_heat17_02/mat05.pdf.
7)環境省水・大気環境局総務課環境管理技術室:ヒートアイランド対策技術分野(建築物外皮による空調負荷低減等技術)実証試験要領、 http://www.env.go.jp/policy/etv/pdf/03/09_5.pdf
8)環境省:平成21年度環境技術実証事業ヒートアイランド対策技術分野(建築物外皮による空調負荷低減等技術)における実証機関の選定及び実証対象技術の募集について(お知らせ)、 http://www.env.go.jp/press/press.php?serial=11455.
9)環境省:ETV環境省環境技術実証事業、 http://www.env.go.jp/policy/etv/.
10)一般財団法人建材試験センター:環境技術実証事業(ETV)ヒートアイランド対策技術分野(建築物外皮による空調負荷低減等技術)、 http://www.jtccm.or.jp/heat.

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