環境マネジメントシステム・スタンダードの今後の課題


環境マネジメントシステム・スタンダード(以下、KES)は、2001年4月にスタートし、現在では全国で取組みが広がり、審査登録件数は4,193件(2013年3月末)、また協働機関も22になりました。

 

KES策定の趣旨は、人・物・金の経営資源の厳しい中小企業や環境負荷の比較的小さい組織でも積極的に環境改善活動に参画していただくことであり、同時に「持続可能な発展」への貢献のための一つのツールとして活用していただくことにあります。

 

スタートから12年を経過した現時点で、審査登録組織から受ける悩みやご相談に対応するため「リフレッシュセミナー」を実施し、その結果から見えてきた課題を整理しました。

 

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筆者:ECOLOGライター(NPO法人KES環境機構・ 専務理事 津村 昭夫)
(この記事は弊社発行媒体「環境パートナーズ(2014年6月号)」より再編集して掲載しています。)

 

1.リフレッシュセミナー

近年の経済状況の厳しさは、とくにKESの主な取組み先である中小企業への影響が大きく、人員整理やコスト削減を迫られることから、KESへの取組みについて主に次のような悩みやご相談を受ける件数が増えてきました。

 

①環境改善目標について、十分 な改善成果(パフォーマンス)が達成できなくなったが、これに代わる新たな「環境改善目標の設定」も難しい。

②長期間取組みが進む中、人事異動やリタイヤ、または長引く不況で人員整理が行われたため、トップマネージャー・環境管理責任者や推進担当者が交代し、その引継ぎが不十分等の理由でシステムがスムーズに運用できていない。

 

そこで審査登録組織において、長期間取り組まれている中で発生しているいろいろな問題・悩みを広く、直接にヒヤリングし、さらに取組み向上に必要な環境関連情報の交換促進を図るため、審査登録組織とKESとの直接「コミュニケーションの場」を設定することとしました。

 

当面は、上記の特徴的な「悩み・相談」事項を解消するため、環境改善目標設定に苦慮されておられる組織や、もう一度初心に戻って先頭に立ってシステムを向上させたいとお考えの「トップマネージャー」や、十分な引継ぎを受けておられない「環境管理責任者や推進担当者」の方々に対して、取組みを長期間にわたって継続的改善していただくためにシステムをリフレッシュすることが必要と判断し、KESにおいて支援のためのセミナー(無料)を実施することとしました。

 

1.1内容

(1)プログラム今回は、上記「悩み・ご相談」事項対応のため次のプログラムを設定しました。

①環境マネジメントシステムの構築と運用(90分)
②環境改善目標設定の考え方 (90分) (KESステップ2SR、KESステップ2Enの紹介を含む)
③支援ツール(15分)KESが常設している、審査登録組織に対する支援ツールを改めてご紹介し、活用していただくことをお奨めする。

○KES倶楽部(KES審査登録組織が自発的に組織された倶楽部で、定期的な情報交換や研修会等を実施されている)

○アドバイザー制度(ゼロエミ・アドバイザー、省エネ・アドバイザー、S-MFCAアドバイザー)
○KES運用のためのサポート体制(無料相談、等)

④質疑応答(15分)

 

(2)スケジュール京都府は、京都市内を挟み南北に細長い地形のため、受講者の便宜を考慮し、市内(審査登録組織の約75%を占める)を2回、南北それぞれ各1回、計4回実施する。

 

第1回2012年10月30日京都工業会館(京都市内受講者を対象)
第2回2012年11月15日福知山商工会議所(京都府北部受講者を対象)
第3回2013年2月8日京都工業会館(京都市内受講者を対象)
第4回2013年2月26日久御山町中央公民館(京都府南部受講者を対象)

 

1.2結果と考察

受講者に対するアンケート結果(文末に掲載)等から、若干の考察を行いました。

 

(1)受講者数各会場での受講者数は下記のとおりで、4会場総計で228名が受講されました。

第1回京都工業会館:68名
第2回福知山商工会議所:34名
第3回京都工業会館:66名
第4回久御山町中央公民館:60名

 

(2)受講組織の特徴

①KES審査登録組織の業種別分布では製造業は約60%ですが、今回の受講では製造業は46%でした。環境マネジメントシステムは製造業の方が取り組みやすいといわれていますが、その意味で販売業やサービス業等製造業以外の業種の方が環境改善目標の設定等に苦慮されているのではないかと推測されます。

②KESの審査登録件数は、ステップ1が約60%、ステップ2が約40%ですが、今回の受講者はステップ1が55%、ステップ2が45%で、やはりステップ2取組み組織の方が運営等に複雑な課題が多いのではないかと推測されます。

 

(3)セミナー参加の目的

受講目的は、「目標設定の行き詰まり:34%」「環境活動の運用と情報収集+システムの再構築:40%」さらに「環境管理責任者の育成:12%」と、事前に寄せられていた「お悩み・ご相談内容」どおりの項目が85%を占め、今後の取組み継続における課題が確認できます。

 

(4)セミナーの満足度およびその他(内容の希望・意見等)
「たいへん参考になった+概ね参考になった:97%」と、初回としては比較的高い満足度をいただきました。 また、「今後も定期的に開催してほしい」とのご希望が27%あり、これを受けまして2013年度もリフレッシュセミナー等を企画していくことを考えています。

 

なお初回はできる限り多くの受講者の「お悩み・課題」解決を趣旨としたため、内容が総花的になった傾向は否めませんが、次回以降は「テーマ別に深く掘り下げた内容」「具体例等盛り込む」等も考慮した内容を検討していきます。

また2013年度以降は、協働機関と協働しながら多くの地域でも開催することに努めます。

 

 

2.今後の課題

2011年3月11日の東日本大震災と東京電力福島第一原子力発電所の事故は深刻な被害をもたらすとともに、一つの課題を鮮明に浮かび上がらせたといえます。すなわち、1000年に一度発生するかどうかは別にして、いつか必ず発生する大災害を考えずに(考えていても、考えないふりをしていた?)、 「今の豊かさ」を優先してきたのではないでしょうか。

 

「持続可能な発展」のためには、時には、今の豊かさを犠牲にし、また時には対立することもありますが、3.11は私たち人類に「どちらを選択するか」を迫っていると理解するべきではないでしょうか?

 

しかし現実の地球環境問題では、ますます「持続不可能な状況」が拡大しています。

その意味でも、環境問題の本質である「持続可能な発展」のために有効な「マネジメントシステム」が必要と考えます。

 

2.1KES新規格の発行

KESでは、上記3.11の教訓から「持続可能な発展への貢献を最大化」「低炭素・低エネルギー社会」 を推進するためのしくみが必要であるとの考えに基づき、昨年10 月に次の2つの新規格を発行しました。

 

①KESステップ2SR
物削KESステップ2にISO2600(0社会減 的責任に関する手引き)の「持続可能な発展への貢献を最大化する」の要素を導入したもの。

②KESステップ2En
KESステップ2にISO5000(1エネルギーマネジメントシステム)の 「エネルギーパフォーマンスの改善に特化」の要素を導入したもの。

 

2.2ISO規格とKES新規格の関連

KESのベースになっているISO14001「環境マネジメントシステム」は、BCSD(持続可能な発展のための経済人会議)の提唱で「持続可能な発展への貢献」を趣旨として「汚染の予防+法令順守」を基本コンセプトに1996年に発行されました。

 

ISO14001は、発行間もなく日本をはじめ世界中に普及し、十数年経過した現在、その評価は 「事業所内全体での環境負荷低減活動」や「法的要求事項への対応、および組織が同意した要求事項への対応」、いわゆる、基本コンセプトである「汚染の予防と法令順守」には多くの成果をもたらしてきましたが、省エネ効果を高め着実にコスト・CO2削減効果を生むなど「広義の環境パフォーマンス」向上には課題を残してきたのではないかといわれています。

 

一方で、ISO26000は自社のCSR 活動の点検ツールとして活用することにより「広 義の環境」に取り組むことで「持続可能な発展への貢献を最大化」することにつながり、またISO50001はエネ ルギー効率の改善に特化したもので、省エネ効果を高 め、着実にコスト・CO2削減効果を生むことが可能であるとされています。

 

2.3 KES新規格の意義

KESに長期間取り組まれている組織においては、「環境改善目標の設定の行き詰まり」や「システム運用上課題」などは,組織を取り巻 く状況の変化に対応するため「システムのリフレッシュ化」が必要です。

 

そのインセンティヴとして、KESステップ2SR (持続可能な発 展への貢献を最大化)、KESステッ プ2En(エネルギーパフォーマン スの改善に特化)の取組みが有効です。

 

すなわち、これら2つの規格を 活用することによりKESにおける従来の取組みの「幅を広げ(KESステップ2SR)」、 また「質を深める (KESステップ2En)」ことによ り、 さらに質の高い環境マネジメントシステムに進化し、同時に「持続可能な発展への貢献を最大化」につながると考えます。

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