「環境企業で働く」ために知っておくべきこと<第2回>


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理工学専攻vs.環境学専攻

 

はじめに

今回は環境分野の求人情報に日々触れる立場から、環境の仕事に求められる専門性、とくに大学における専攻内容が、 就職や転職の際にどのような影響を及ぼしているのかについて実例とともに見ていきます。

筆者:ECOLOGライター(宮下 雅之)
(この記事は弊社発行媒体「環境パートナーズ(2014年6月号)」より再編集して掲載しています。)

 

雇用増が期待される

環境産業環境省は2014年4月、「環境への取り組みをエンジンとした経済成長に向けて(平成24年度報告書)」を発表しました。 これには2000年以降の環境産業の市場規模・雇用規模推移が掲載されています。

これによると環境産業の雇用規模は一貫して増加し、2011年時点で227万人となっています。 また、本報告書では環境産業をA.環境汚染防止、B.地球温暖化対策、C.廃棄物処理・資源有効利用、D.自然環境保全の4カテゴリーに分類したうえで、 それぞれの雇用規模推移も記載されており、目立っている点は地球温暖化対策分野に関しては2000年と比較して約3倍に拡大しています。

このように、環境産業の雇用規模は拡大しています。 そこで新たに生まれている求人情報にはどのような傾向があるのでしょうか。 当社に寄せられる求人は、全体から見ればごく一部のため全体的な分析とはいえないかもしれませんが、私が日々実感している傾向について、 求められる専門性という点から述べてみます。

 

環境産業で求められる専門性とは

当社に寄せられる求人数は年間700件ほどです。 その中のおよそ7割が理系バックグラウンドを必須条件としています。理系バックグラウンドには、大学および大学院での機械、電気電子、化学、 環境工学などの理工学系専攻が含まれます。 ただ、これらすべてが技術者としての採用かというとそうともいい切れず、営業やコンサルタントなど、 環境産業以外ではとくに理系素養が求められない職種に関しても、理系バックグラウンドが求められているのが特徴です。

一方、理系バックグラウンドが必須の求人以外、つまり残り3割の傾向が気になるところだと思います。 10年以上前から大学では理工系学部とは別に、環境学部が増加しています。

私自身も大学で環境学を専攻しました。内容は、経済や法律から国際関係論に至るまで幅広いものでした。 このような環境学専攻が実際の環境の仕事に結びついているのかを検証しなければなりません。 結論は「それはまだ途上にある」と私は捉えています。 残念ながら残り3割の中で採用条件に環境学専攻をあげる求人はまれですが、人事担当者に採用したい人材のイメージを伺うと、 環境学専攻で学ぶ内容と共通する採用ニーズがあるように感じます。

環境コンサルティング会社や環境ベンチャーでは、営業・調査・事業企画とさまざまな業務を担当するため、学際的なバックグラウンドを活かすことができるのです。 環境学専攻で転職を成功した実例をご紹介します。

 

環境学専攻の方の転職事例

昨年、40代女性(A氏)がグレイスに登録で来社されました。 A氏は短期大学を卒業後、出版社や新聞社で働いてきました。 環境分野に興味があり社会人学生として環境学部に入学し環境政策を専攻し、適切な森林管理が行われているかを確認することのできる森林認証制度(FSC認証) について研究されたそうです。

当社は、環境コンサルティング会社の紹介予定派遣(6カ月以内の人材派遣契約から直接雇用に移行する制度)として、研究員補佐の仕事をA氏に紹介しました。 英語が得意だったA氏は無事に直接雇用に移行し、現在では海外に一人で調査に向かうなど大きな活躍をしているようです。

今回の採用プロセスでは、求人内容で理工学専攻は求められない一方で、環境に関する全般的な知識、とくに政策や法律に関する専門性が重要視されました。 海外調査を行う際には、それぞれの国の政策や法律によってビジネスが動きますので、環境学部出身者が適任だったようです。

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