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2015.12.19

【インタビュー】カルビー株式会社のEVI事業とは


私たちは「日本の森と水と空気を守る」という理念を掲げ、EVI(EcoValueInterchange)活動を2011年3月に開始しました。

この2年2カ月は、数多くの森林事業者の方々や木材加工場の方々、企業の方々に出会うことができた貴重な時間でした。 誌面をお借りして恐縮ですが、これまで出会えた多くの皆様に心から御礼を申し上げます。

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http://www.evic.jp/evi/top.jsp

 

 筆者:ECOLOGライター(カルビー(株)事業開発本部 カルネコ事業部事業部長 加藤孝一)

(この記事は弊社発行媒体「環境パートナーズ(2014年6月号)」より再編集して掲載しています。)

 

EVIの原点

「カルビーさんがこの仕事(EVI)を始められたのはなぜですか?」これまで何度もこの質問をいただきました。

EVIを設計・構築したカルネコ事業部は、売場演出のメッセージツール(POP)の調達を仮需から実需に転換し、「必要なものを必要なときに必要なだけ、どこへでもお届けする」 ことによって、プロモーションの効果と効率を両立できるビジネスモデルとして、2005年9月から事業を開始しました。

同事業部設立以来、多くの企業のPOP調達をサポートさせていただき、数多くの成果事例を積み重ねる中で、プロモーションのプロとしての評価もいただくようになりました。

そのような流れの中、菓子業界で2009年度にCFP(カーボン・フット・プリント)算定試行事業が行われ、いくつかの商品にCFPが付くところまで進捗した際、 最終仕上げとして店頭でCFP商品が好意的に消費者に受け止められるのか、果たしてうまく売れるのか等を検証するためにプロモーション企画を組むことになりました。

カルネコ事業部にサポートの依頼が入り、「あなたが選ぶ森が活きる」という森林保護支援の企画を提案したことが今思えばすべての始まりのような気がします。

CFP商品のプロモーションなのだから、何らかの形で環境貢献につながる方がよいと考えました。 当時、森林吸収系J-VERクレジットに取り組まれていた40数カ所のプロジェクトの中から消費者から見たときに名前を見ただけで取組みの内容がわかるクレジットを4つ選択し、 その中から応援する取組みを消費者に選択していただくようにしたら…。

購入した商品に付いているCFPマークを切って応募用紙に貼って4つの取組みの中から1つを選択してご応募いただきます。 CFP1枚につき2円を、選択されたプロジェクトのクレジット購入資金にします。 こうすることで参加型のプロモーションになり、選択するために取組内容を読んでもらうことによって環境に関する興味も持ってもらうことが可能になるのでは…と考えたのです。

2010年8~9月の2カ月間、関東圏の112店舗で試験的に実施したところ、スーパーマーケットのエコスさん6店舗のPOS実績で、前年同期間対比2.7倍の販売数量を記録しました。 「普段のお買い物を通して環境貢献できるなら1割高くても買う」という熱いメッセージ(全体の約7割の反応、環境貢献意識の高い方では87.5%にも上る)もいただき、 温暖化の進行を本気で心配し、子供や孫の時代によい環境であってほしいという思いは私たちが考える以上に消費者の方が進んでいることが確認できたヒットキャンペーンとなりました。

このとき、キャンペーン成功の反面、うまくいかなかったことがありました。 1つはこうしたクレジット活用型のキャンペーンの場合、クレジットの販売者から許諾をもらうために旅費と時間がかかったこと、 もう1つはクレジット販売単位がトン単位であることでした。

前者は下川町と岡山の津山までどちらも1泊2日かかり、後者は集まったクレジット購入原資の100倍以上の資金を拠出する結果となりました。また、森林で施業をされておられる方の「頑張って取組みをしてクレジット認証を受け、ようやく販売を開始できるところまできたのですが、本当に売れるのですか?」 と本気で心配している姿にも出会いました。

幸い企画の成果=販売実績は高かったのです。 ということは、消費者からは「普段のお買い物を通して環境貢献できるプロモーション企画」が求められています。 森林保護をしている事業者の方々は「クレジットは本当に売れるのか?」と心配しています。 企業は環境貢献に力を入れなければならない時代に来ています。

こうした3者の事情は、互いに補完関係として成り立つはずです。 ここで運営に課題があることがはっきりわかったのですから、この運営上の課題さえ解決してしまえば、 多くの企業で消費者が求める環境貢献型プロモーションを手軽に展開できるはずで、日本の森林保護はこれまでよりも多くの企業のサポートを得られるはずだと考え、 ①個別交渉に時間とコストがかかる、②排出権の購入がトン単位で精算金額が必要以上に高額になる、という2点を解決し、 さらに企業が単独で環境貢献活動を行ったとしても認知度を上げることが難しいという3点の課題を解決し、森林の取組みから生まれたクレジットと企業に出会っていただき、 一定のルールの下、安定的かつ継続的にクレジットを購入していただけるしくみの設計を2010年8月から始め、11年2月に完成、3月より活動を開始しました。

13年4月現在、全国の44カ所の森林のクレジットを預託いただいており、都道府県別では73%をサポートしています。 今後、100%をめざし、地産地消型プロモーションのプラットホームに向けて活動を推進してまいります。

 

EVIによる環境貢献サイクル

前段でEVIは3者の事情を合わせることによって環境貢献を可能にするプラットホームとして設計したとお話ししました。

環境に関心のある消費者の「エコに関心があるので参加したい。どんな活動があるのだろう?」。 環境保護に関心のある企業の「CO2削減に貢献したいがどうしてよいかわからない。環境貢献型のプロモーションって、どうすればいいの?」。 環境保護活動を行う事業者の「クレジットの認証を受けたが、本当に売れるのか?」といった、3者が抱える悩みを解決するプラットホームがEVIです。

森林事業者からクレジットを預託していただき、取組内容を自由に表現することのできる機能を備え、企業または消費者はその取組みを閲覧することができます。

企業は自社の理念に合った森林保護活動を選択し、一定の支援ルールを設定します。 精算は基本的に月次ですが、企業ごとに応援する森林の数や応援方法も自由に設定可能です。

EVIを通じて継続的に森林支援を行っている企業数は27社ですが、その中で蘭の花を製造販売している企業では、蘭の花1鉢に付き10円を拠出するというルールを設けています。

たとえば5,000鉢の販売であれば10円を乗じた5万円を請求し、入金金額全額をクレジット購入原資とすることで、少しでも多くの資金が森林に環流されるしくみとしています。 カルネコ事業部自身もPOP1つにつき2円を拠出するというルールを設定しています。

現在までに997t-CO2の購入を行っており、そのクレジットを活用してPOPの配送に使用する外装材の製造時に排出するCO2の全量をオフセットしています。

このように企業が一定の支援ルールを設定し、拠出した資金でクレジットを購入し、保有したクレジットで自社の事業活動から排出されるCO2をオフセットする流れを 「環境貢献サイクル」としてEVI参加27社で推進してまいります。

27社のEVIによる森林支援の実績は118件1,379t-CO2となります。 まだ少ないようですが、安定的に継続していくこと、だんだんと仲間が増加していくことでやがて頼りになる存在として認めていただけるようになることを目標にしています。

 

環境貢献型プロモーションの実践

冒頭ご紹介した「あなたが選ぶ!森が活きる」の成功事例では、「普段のお買い物を通して環境貢献できるなら1割高くても買う」 という消費者の積極的な環境貢献意識が確認されましたが、それをさらに裏付けるのが森永乳業㈱のアイスクリーム・MOWが2012年3~12月に展開した 「しぜんはたいせつ。日本の森を守ろう!」キャンペーンです。

MOWの購入代金の一部を消費者自身が選んだ森林のクレジット購入に環流し、応援する森林保護活動をサポートします。 全期間合計77万人を超えるヒットキャンペーンとなり、約80tのクレジット購入を行いました。

本キャンペーンはEVIのキャンペーン応募を司る機能と支援先を閲覧・選択できる機能を組み合わせて稼働しています。 この機能を活用して昨年秋には被災地支援のキャンペーン「ひろげよう防災の輪・あなたが選ぶ!ともに生きる!」キャンペーンを展開しました。

防災の備えとして購入した商品1つにつき1円が被災地から発行される復興クレジットの購入原資となるしくみです。

「自分の身を守ることが、同時に被災地の支援につながる」。 9月1日の防災の日前後の展開期間を設定し、日本スーパーマーケット協会(JSA)、日本チェーンストア協会の後援、参加5社、JSA加盟の35企業1、828店舗で実施し、 約180万円の資金を創出し、159tのクレジット購入実績となりました。 本キャンペーンは高く評価され、今年度も継続展開が決定しています。

2013年度は8月19日~9月吉日の任意の展開期間で店頭展開し、9月末日までのキャンペーン期間、日本スーパーマーケット協会、新日本スーパーマーケット協会、 オール日本スーパーマーケット協会、日本チェーンドラッグストア協会の4協会加盟の企業が参加し、日本チェーンストア協会の後援も得て実施します。 スーパーマーケットに加えドラッグストアでも展開し、全国で1万店の実施に向けて推進しています。

 

市民レベルの環境貢献活動を支援

EVIは環境家計簿(エコ口座)機能を装備しており、家庭におけるエネルギー全般の使用履歴を蓄積、 CO2排出量を把握できるとともに前年対比での削減状況を自身で管理できるツールとして利用可能にしています。

この機能を活用して市民レベルのCO2削減運動を展開中なのが山梨県南アルプス市の「わくわくエコチャレンジ」です。 2012年12月~13年2月の3カ月間、102世帯でスタートしました。 冬場と夏場(7~9月)の2期を3年間取り組みます。

毎月の電気使用量を前年同月と比較し、削減できた分のポイントを発行し、地域で使える商品券と交換することで地域経済の活性化とCO2削減の両面に取り組む一石二鳥の取組みです。

第1回は全体で4tのCO2を削減することができました。 現在、夏期(7~9月)の参加世帯を募集中ですが、好調な申込み状況とお聞きしています。 今後、こうした個人レベルでの機能を強化し、クレジット購入による森林支援、クレジット保有後のオフセットを個人レベルで実行可能なプラットホームにしていこうと考えています。

 

6次産業化を支えるプラットホーム

南アルプス市のカーボン・オフセット・クレジット付きさくらんぼの販売をサポートさせていただくに当たり、次のように展開しました。

オフセット認証マーク付きのさくらんぼの売場に、「いいひと、いいしな、いいくうき」と書かれたメッセージ・ボードが掲示されており、 「温室を加温するボイラーの燃料を木に変えている」こと、「小水力発電によるCO2削減分を5kg付けている。これはあなたが生活するうえで排出する1日分5.6kgのほぼ全部を相殺できる」 ことを説明したリーフレットを自由に持ち帰えれるようにしてあります。

これによって、キャッチコピーの雰囲気で「なんとなく環境に配慮したものなのね」と思う人もいれば、理屈をきちんと知りたいという人はリーフレットを商品と一緒に持ち帰り、 ご自宅でしみじみリーフレットを眺めながら「そういうことね!」などといいながらおいしく召し上がっていただく人もいると思います。

人それぞれに理解する1年目をめざしました。 昨年は4月中旬から販売し、日本橋高島屋では2日間で完売しました。 今年は2年目ですから、少しだけ説明を深めました。 来年はいよいよ正面から意味をきちんと説明する年になります。

こうして、難しい概念を3年計画で展開するような我慢強い組み立てもきちんとした理解を得るためには必要だと思っています。 農林水産業の6次産業化が話題になっています。

今後、EVIではクレジット事務手続のワークフローおよび外部システムとの連携機能の装備を視野に入れ、6次産業化を「カーボン・オフセット・クレジット付」で考えたり、 パッキングにかかるCO2排出をクレジットで相殺して環境貢献型商品にする、 または商品1つに付き1円を森林クレジット購入によって環流するなどのクレジット調達アクションがより簡潔にできるプラットホームに成長させる必要性を感じています。

また、6次産業化ではマーケティング上のコミュニケーションが非常に重要になります。 キャッチコピーの創案からデザインワーク等、世の中の多くの人たちの知恵を集め、よりローコストで目的を実現できるしくみも考案しています。

 

森のめぐみを森にかえす

森に入ると、その清々しい空気に心を洗われる気がします。 森は私たちの生活に欠かせない数々の役割を淡々と果たし続けてくれています。 木を植えた後、育った木の間にある木を間引きします。 そうすると木はさらにすくすくと成長し、私たちが排出したCO2をより多く吸収し、自らの体の中に固めてくれます。

私たちは森がその機能を保ち続けるためのサポートをしなければなりません。 木を植え、木を運び出すための道をつくり、運んで加工し、製品として活用します。

そうした連鎖が正しく機能しなければ森を健全に維持することができません。 切った木を運び出す費用よりも販売価格の方が安いため、切り捨てられて森に残されたままになっている木がたくさんありそうです。

何十年もかかって育った森の恵みをそのままにせず、何らかの形で製品化し、その販売価格の一部を森に環流することができれば、活き活きとした森を維持することができます。 森が次の世代にもその役割が果たせるようにするために、EVIは「木の出口」のコンセプトの下に 「森のめぐみのおとりよせ」WOODLUCKブランドによる製品開発と通販サイトを立ち上げます。

未利用となっている木材を材料として製品開発を行い、価値を生み出します。 すべての品目の販売価格の一部は森林へ環流されるとともに商品製造上のCO2をオフセットします。 また、「アドオン」機能により、消費者の思い入れのある森林には商品代金に加え、気持ちを環流できるようにしています。 「アドオン」は購入者の生活のCO2排出をオフセットし、履歴が蓄積されるようになります。「世の中に木で置き換えられないものはない」という考え方で強力に推進します。

 

これからのEVI

前段の「森のめぐみを森にかえす」は、EVI-FVRM(ForestValueReturnModel)コンセプトの実践です。 そのために、これまでEVIにクレジットを預託していただいた森林の現地に積極的に訪問し、現場でのご苦労や問題点、ニーズ等、直接お聞きしてまいりました。 森に伺った際に必ず加工場を紹介いただきます。

そこで1つだけ質問します。「この加工場の近くの森の木以外の材も受け入れていただき、御社で加工していただけませんか?」。 こうして現在、7カ所の加工場ネットワークができました。 これをもっと増やして、「応援する森の木で気に入った加工方法でつくる」。 これが木の出口のコンセプトです。 木の出口の最終工程は身障者の方々に担っていただきたいと考えています。

冒頭のクレジットへの取組みは、「クレジットの出口」です。 この両輪で日本の森と水と空気を守っていくとともに、身障者の方々の雇用率の向上に少しでも寄与できれば幸いです。 日本の森の現状を自身の目で確かめ、現場で働く人の声に耳を傾ける。 日本の森と水と空気を守るために有効なよりよいしくみづくりにEVIは今後も取り組んでまいります。

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