討論:原子力は必要か?(TED書き起こし) 1/2


クリス:公開討論を行います。討論の主題は「世界は今原子力を必要としているのか?」議論に行く前に賛成か反対かみなさん挙手をお願いします。賛成の方手を挙げてください。了解、降ろして、反対の方は?今の時点ではだいたい賛成75、反対25で賛成が優勢のようです。討論の後にもう一度票を取ります。変化するかどうか楽しみですね。討論は各自の持ち時間が6分間あります。その後、両者で簡単に意見交換を行います。客席からも賛成反対の意見をそれぞれ2名から頂きたいと思います。

 

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ではさっそく賛成派から環境運動の生みの親の一人であり”Whole Earth Catalog”の著者でおなじみスチュアート・ブランドです。

 

スチュアート:やあ(拍手)昔から気候問題は識者ほどそれを憂虞し、原子力は反対に識者ほど危惧しないと言われている。典型的な例はジェームス・ハンセンである。NASAの気候学者で大気中のCO2の濃度を350ppmにすることを訴えている。彼は”Storms of My Grandchildren”という素晴らしい本を書いたハンセンはこの問題に精力的に取り組んでいる。他の学者と同じように原子力を推進している。

 

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ここに例がある。この惑星は 温暖化が進んでおり、半分が都会である。人口の割合的には6人中5人が発展途上国に暮らしている、人々は都会へと移動し、子供たちを教育し、多くの子供を産まずに平和に暮らしている。人々は都会へ集中し、仕事の次に欲しがるものと言えば電気である。電気は手に入らないとなると安易に盗まれてしまう。電気は田舎や都会に関わらず世界中の貧しい人々によって求められている。都市部の電力量は基底負荷電気と呼ばれる。それは必要な電力として常に発電されている。そのエネルギー源は石炭とガス、水力、そして限界に達しつつある原子力だ。本当はここに4つ目があると良いが、太陽光 風力などは安定面や衛生面拡張性においておぼつかないためまだ該当しない。原子力はその意味でも既に40年の実績がある。

 

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では 環境面の立場から最も注目すべき点は2大エネルギー源の原子力と石炭からの排出物である。人間の1人が一生涯必要な電力をすべて原子力でまかなう場合、排出物はコーラ缶に収まる程度で済む。ただし約900gと重たいコーラ缶だが、しかし石炭の場合 一般的な火力発電所においては、たった1日分の排出物でさえとてつもない量のCO2になる。さて排出物はどうなるか?殆どの原子炉は地下貯蔵庫を持たないため、原子力の排出物は貯蔵キャスクに格納される。ただ 勝手に移動しないのでそれほど悪くない。一方 CO2は数ギガトンという膨大な量が大気に放出されるが、まだそれを回収する術がない。まさに我々が危惧する問題である。温暖効果ガスの排出量を異なる電力ごとに比較すると、原子力は風力や水力より少なく太陽光よりも、ましては化石燃料より少ない。

 

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風力はすばらしい。私は好きだ。私はあの大きな風力発電機の周りで過ごすのが好きだ。しかし風力は太陽光発電のように比較的心許ないエネルギー源であることを我々は発見した。とても大きな土地面積を必要とし、資材も原子力に比べ約5~10倍必要である。一般的な風力発電所では1ギガワットの電力に対し、648平方km必要とされる。実際デンマークやドイツなどでは設置場所が原因で風力発電が限界に達している。送電線は過剰気味になり、頭打ちになる同じように、特にここカリフォルニアでは80カ所の太陽光発電所により2589平方kmの砂漠を整地する計画が進んでいることが分かった。環境学者としてはあまりやって欲しくない、やせた農地でならまだマシかも。太陽光は屋根の上ではすばらしいが、土地利用となると1ギガワットは約130平方kmの砂漠の整地が必要である。

 

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これらを全部まとめてサウル・グリフィスが計算したところ、風力、太陽光、バイオ燃料などで約13テラワットのエネルギーを生産するには、米国とほぼ同じ大きさの土地が必要である。彼はこれを”Renewistan”と呼んでいる。英国の物理学者であるデービッド・マカイは彼の著書”Sustainable Energy”で 自分のことを原子力推進派ではなく、単なる採算主義であると言っている。

 

(笑い)

 

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軍事的な視点では、軍備縮小のツールとして原子力は最良である。我々はロシアの核弾頭を電気に変えた。米国の10%の電気は廃棄した核弾頭が元となっている。我々はまだ核備蓄を始めていない。観衆は次世代の原子炉に最も興味があると思う。とても小さく、およそ10~125メガワットくらい。こちらは東芝製、こちらはロシアが水上に建築したもの。発展途上国の関心を惹くだろうこちらは地下に埋められるタイプ。原子力電池と呼ばれ、とても安全で核開発の防止にもなる。これはニューメキシコにあるHyperion社が開発したもの、こちらはオレゴンのNuScale社製、こちらはB&W社製の統合高速炉ネイサン・ミアボルドによるトリウム炉。各国の政府は 石炭の価格を上げ、原子力を推進する判断に迫られるだろうそこに未来がある

 

(拍手)

 

わかった わかった(拍手)では反対意見を。長い間エネルギー問題や気候問題に正面から立ち向かってきた男。彼は2000年に煙塵がCO2に次ぐ地球温暖化の要因であることを発見した。彼のチームは異なるエネルギー源ごとに相対的な影響度合いを細かく計算した。初登場で不利かもしれませんが拝見しましょう。スタンフォード大学よりマーク・ヤコブソン教授です。

 

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マーク:ありがとうございます。(拍手)原子力エネルギーは地熱や波力、さらに風力や太陽光などの再生可能エネルギーよりもより大気を汚染し、より多くのCO2を排出し、死亡率を高め、建設に時間を要するさらに核兵器の拡散を招く。ではまずCO2排出量から始めます。CO2eとは、温暖化の原因となる温室効果ガスや、粒子をCO2濃度に換算した数値である。風力や集光型太陽熱はグラフが示す通りCO2排出量が最低である。グラフには2つの棒がある。低い見積と高い見積、低い方は原子力業界による見積もりで、高い方は103の学術文献から算出した見積もりの平均値である。この数値はライフサイクルCO2のみを表している。

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次に遅延について。原子力発電所は計画段階から実際の運用まで10年~19年は必要で、内訳は設置許可申請に3年半~6年、そして建設許可に2年半~4年、さらに実際の建設に4年~9年の歳月がかかる。現在中国では5ギガワットの原発を建設中だが、建設の時間だけでも平均7.1年かかる。計画の時間は含まれない原子力の建設を待っている間にも電気を発電し続けなければならないが、それには通常は火力発電が用いられる。

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このチャートはCO2e排出量を風力発電の値を基準に原子力、その他のエネルギー源との比較を表したものである。風力は平均2年~5年必要で、太陽熱や太陽光と同くらいである。よって原子力と風力その他との違いは建設されるまでの機会損失に現れる。これらを加えると原子力は風力に比べ9~17倍のCO2e排出量となる。しかもこれは必要面積の問題は含まれない。

 

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大気汚染による健康被害を見てみます。これは自動車排気ガスによる2020年の死者数を予想したものである。仮に米国の全ての自動車を電気自動車や、液体水素燃料や、フレックスや、E85燃料車にした場合、米国では現在5万~10万人が大気汚染で亡くなっており、うち2.5万人は排気ガスが原因だ。2020年にはこの数字は技術向上により1.5万人に下がるだろう。右はガソリンによる排出で、2020年の死亡率である。トウモロコシやセルロース系エタノールは、実は死亡率が若干高まる原子力だと大幅に減少する。しかし風力や太陽熱ほどではない。

 

原子力エネルギーの普及と核兵器拡散は関係がある。なぜならインドやパキスタンは原子力発電所でウラニウムを濃縮し、内密に核兵器を開発した。北朝鮮もある程度は行っている。イランは現在進行中で、ベネズエラでも原子力発電所で行われている可能性がある。原子力発電を世界中に普及させ、その結果、もしも核爆弾が1つでも作られ、例えばムンバイなどの大都市に投下されたとすると、これによるさらなる死亡率を米国の人口に 30年間に平均して換算するとこのようになる。本当にこれが望んだ結果でしょうか。

 

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必要面積はどうだろうか。風力発電に必要な面積はどの発電源よりも少ない。なぜならご覧の通り必要なのは地面に刺さる柱の面積だけである。さらに米国の全ての自動車の動力は5メガワットの風力タービンが73,000~145,000個あれば補え、しかも1~3平方kmの土地面積で十分である。ちなみに空間は別の話だ。土地面積といつも混同される。人は土地面積と空間を混同してしまう。これらの写真からもわかるように、タービン間の空間は別目的で利用可能だ。例えば農業地や放牧地や空き地など、海上の場合は土地すら必要ないが。

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原子力を見てみよう。原子力の場合はどうだろうか。設備がこの辺にあると緩衝地帯が約44平方km必要だ。そしてウラニウムの採掘場も考慮しなくてはならない。

 

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従って土地面積において、原子力は風力より不利である。この図は米国の全ての自動車を動かす為にどれだけの面積が必要か比較してみた。これは次世代のバイオ燃料で、プレーリー草を用いたセルロース。これはコーンエタノール。さらに小さいこれはあらゆるデータを元にしている。原子力の場合はロードアイランド州ほどの土地が必要だ。風力の場合は空間は大きいが、実際の土地面積は小さい。もっとも風力の場合は、理論上西海岸の沖に設置することもできる。さらに地熱の場合だと、どちらよりも小さくなる。太陽光は原子力と比較すると若干小さい程度だが、それでもかなり小さい。今のは全米の自動車の動力だが、全世界の半分の動力を風力でまかなう場合、おおよそ地球の1%の土地が必要になる。

 

討論:原子力は必要か?(TED書き起こし) 2/2

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