秋田県 横手市の「森林組合森林吸収プロジェクト」


forest-505860_640

「霞がお金になる?」

「霞がお金になる?」今までそうなればいいと考えてはみても、なかなか実現しそうにない、そんな話を耳にしたのは4年ほど前でした。そして、秋田県内では大館北秋田森林組合が東京のプロバイダーと一緒にカーボン・オフセットJ-VERプロジェクトを立ち上げたのをきっかけに、秋田県内各所でJ-VER※1 の取組みが始まりました。

秋田県内では秋田県や大館北秋田森林組合を中心に、J-VER推進連絡協議会としての活動も盛んに行われていました。

筆者:ECOLOGライター(横手市森林組合理事兼参事・森林環境対策室長 千田 孝八)
(この記事は弊社発行媒体「環境パートナーズ(2014年4月号)」より再編集して掲載しています。)

 

森林の現状

横手市管内森林は約35,790ha、そのうちの約半分近くが横手市管内の山内地区の森林で占められています。元々2005年の8市町村合併以前は秋田県内にある行政区域内で山林のない3町村のうち横手市平鹿郡管内に十文字町と大雄村の2町村が存在していました。

管内には国有林もほとんどなく私有林と市町村有林、財産区有林などで構成されています。人工林率約45%の比較的林業がそれほど活発でない地域ともいえます。

東は奥羽山脈、西は出羽丘陵に挟まれた雄物川中流域の多雪地帯です。秋田県南内陸部に位置していますので、夏は30°Cを超し、冬の平均最低気温は零下5°Cにもなります。

降雪が早く積雪が平地でも2mほどに達し、重く湿った雪の雪解けが遅いため、樹木の根曲がりなどに悩まされています。土壌は細粒グライ土壌が主ですが、横手市西方の盆地中央は低位泥炭土壌、黒泥土壌が多くを占めています。いわゆる黒いネバネバした土です。

森林土壌も肥沃ですから木の生長も良好ですが、湿った重い雪の影響で若齢林の根曲がりも極端な状態です。そのような環境にあるため、真直ぐな幹になるまで60~70年ぐらいかかります。

間伐対象林分は根曲がりが多いため、間伐材の製材等に利用できる部分は雪のない地方に比べ極端に少ない状態です。

 

カーボンオフセットJ-VER事業

横手市森林組合の前身である平鹿広域森林組合は1973年8月に管内の森林組合が合併したものです。2005年の8市町村合併に伴い名称を「横手市森林組合」に変更し現在に至っています。組合員数は約1,600名、市町村合併の関係で横手市の出資金が約4割となっています。

今回、横手市と横手市森林組合が共同プロジェクトを組み、カーボン・オフセットJ-VER事業を行うこととなったきっかけは、森林整備を行ってきている森林現場を多面的に活用できることが地域にとって重要であり、地球温暖化対策にも貢献できるということを横手市と横手市森林組合の間において確認できたことでした。

そこで、旧山内村の村行造林地や私有林などで2008年度から3年間行われたスギ人工林間伐施行地の中から29カ所を選定し、それを中心に対象としました。

対象面積は213.65haで29カ所のスギ人工林間伐事業地、モニタリング期間は2008年4月から2011年3月までと設定しました。方法論はR001、発行クレジット量は6,304t-CO2となりました。

当初申請時には3,000t-CO2ほどの試算をしていたのですが、検証機関の現地検証により、スギの成長がかなりよく地位級が高評価され、当初見込みより約2倍の6、304t-CO2クレジット発行となりました。

検証機関の現地調査は2月の降雪期に入りましたが、雪の中検証機関のSGSジャパンには調査可能なすべてのプロット調査地を現地確認していただきました。すべてのJ-VERに関するモニタリング箇所や検証機関の検証作業は、横手市森林組合のHPブログおよびYouTubeに詳細を公表掲載しています。(横手市森林組合のyoutubeページはこちら

横手市森林組合ではJ-VERなどに対応するため、組織運営上「森林環境対策室」を設置し、そのことに対応しております。秋田県内の他の森林組合とは異なり、プロバイダーなどの業者を介せずに横手市・森林組合森林吸収プロジェクトを立ち上げましたので、認定やクレジット発行までの事務手続きにたいへん手間取りました。

プロジェクト立上げに伴う事務手続き費用は横手市で予算付けいただ き、事務委託契約し横手市森林組 合森林環境対策室が事務局として このプロジェクトの対応をしてお ります。

購入者様に対するサービスや主な資金用途につきましては次のと おりです。

 

①基本的に森林整備(間伐、新植など)に使われます
②地域の子供たちへの「森の学校」などの森林教育を行います
③購入者様を森林環境に親しん でいただくために植樹や育樹作 業にご招待します。
④「(株)○○○○の森」というよう にカーボン・オフセットモニタ リング対象地に看板を設置します
⑤購入者様には、木製のカーボ ン・オフセット証明書を発行し ます。
⑥横手市森林組合HPブログに購入者様の名前を公表掲載し宣伝します。
⑦横手の観光行事などをご案内します。
⑧販売売上金の一部を東日本震災被災地への支援とします

 

現在、交渉中のものは何件かありますが、販売については成約したものは0tです。プロバイダーなどの業者を介せずに認証・登録・発行手続きなど行ってきたことについては、たいへんよかったと思っています。

しかし、この1年間販売実績がないことは販売戦略を根本的に考え直す機会としたい と考えています。

 

さらなる事業展開をめざして

現段階でカーボン・オフセットJ-VER事業への取組みは、森林組合として森林整備を中心とした従来事業のみならず別次元の事業展開へ向かう入口です。長期展望にたった森林関係の取組みは、足下の単年度事業消化に追われ忘れがちになる傾向にあります。

地域の森林環境のみならず地域の生活環境に貢献するためにも、森林組合が存在することの意義を見つけなければなりません。

横手市森林組合ではホームページでブログ、Twitter、mixi、Facebook、ウィキペディアなどリンクさせ、インターネットをフル活用しています。とくにブログの更新はほぼ毎日行い、情報の交換に役立てています。(横手市森林組合公式ブログはこちら )

それがきっかけとなり異分野や異業種との交流が始まっています。さらに、組合員や役員、職員、作業班などの意識改革にも一役かっています。

このようなことがきっかけとなり、J-VERカーボン・オフセットクレジット事業取組みと同時期にバイオマスガス化発電事業とバイオコークス製造事業(環境省委託事業)を経済産業省外郭団体の(一般財)石炭エネルギーセンターと共同プロジェクトで始めています。

今後森林環境に軸足を置く森林組合は地球環境に配慮していくうえで、多角的・多面的な森林資源の活用は今後重要なファクターといえます。

京都議定書から日本が離脱し第二約束期間に入る2013年度より施行される新クレジット制度については、全国説明会が各地で行われています。国内クレジット(経済産業省)とJ-VER(環境省)統合という単純なかたちではありませんが、具体的には詳細がまだ決まっていないようです。新クレジットが始まっても、いずれ統合されるJ-VERと国内クレジットは2020年まで現在のまま取り扱われるようです。

2013年から2020年までJ-VERと国内クレジットは移行届により新クレジットに移行できるようになるようですが、詳細はまだ発表されていません。

私どもは今現在所有しているJ-VERカーボン・オフセット・クレジットを環境意識の啓蒙普及とともに、それをご理解いただく企業様に協力いただき、一緒に森林環境保全等に活用していきたいと考えています。今後とも皆様のご協力よろしくお願いいたします。

 

※1 J-VERとは「オフセット・クレジット」のこと。「オフセット・クレジット(J-VER)」プロジェクトを計画し、環境省による「カーボン・オフセットに用いられるVER(Verified Emission Reduction)の認証基準に関する検討会」の議論におけるオフセット・クレジット(J-VER)制度に基づいた妥当性確認・検証等を受けることによって、信頼性の高い「オフセット・クレジット(J-VER)」プロジェクトとして認証を受け、クレジットが発行される制度です。 オフセット・クレジット(J-VER)の創出は結果的に、国内におけるプロジェクトベースの自主的な排出削減・吸収の取組を促進することになり、国民運動として進めている「低炭素社会形成」を促す原動力となります。

 

 

この記事の著者

あわせて読みたい

  30年前から提唱される「地球崩壊のシナリオ」 私は、1990年代初頭から気候変動(特に地球温暖化)が私達の生活にどのような影響があるのか、専門である山本良一氏の発言につい…
  1. はじめに 日本人の知識人(インテリゲンチャ)は、海外における活動において、自分と同じような知識バックグラウンド、あるいは他の豊富な知識人たちとのコミュニケーショを好む傾…
1.はじめに   「パリ協定」の批准に伴い,日本企業における環境経営への取組みは,企業の大小にかかわらず喫緊の課題となっています。環境経営における代表的な取組みの一つに,国際標準…
  先日5月6日に、一般社団法人日本環境測定分析協会から、「名誉会員証」が届きました。同協会は、1974(昭和49)年に当時の通商産業省と環境庁との共管のもと誕生した社団法人で…
環境コミュニケーションズ