「環境企業で働く」ために知っておくべきこと<第1回>


write-593333_640

環境の資格とは

環境の資格は、それぞれの分野に関係する技術ごとに存在しています。たとえばエネルギーの分野では、地球温暖化対策のために国や自治体が進めているCO2排出量削減計画に沿って、民間企業が自らの消費エネルギーをマネジメントするエネルギー管理士。

また、東京都は事業所のエネルギー消費を検証するための検証主任者を創設しました。

東日本震災後には、再生可能エネルギーの需要に対応するため太陽光発電プラントなどの設備開発に関連して、電気設備系の資格である電気主任技術者(第一種、第二種、第三種)や電気工事士(第一種、第二種)の需要が高まっています。

このように、環境分野の資格は世の中のニーズによって注目度が変化します。また、これらの技術系資格は、業務経験を積んだ結果、相応の資格を取得できる、という種類のものが多いのも特徴です。

さらに、個々の環境対策となると技術系の仕事が多いので、その技術を立証するための資格という位置づけの場合もあります。

 

技術者以外の資格

detection-563805_640

では、環境分野の仕事に必要な資格は技術経験を経てのみ取得できるものなのかというと、そうとも限りません。上述したように、環境の仕事が常に世の中の動向に左右される傾向にある中、場合によっては技術系のカテゴリーには属さない仕事が発生することもあるのです。

それは、たとえばビジネス経験と外国語(とくに英語)を活かした仕事です。日本国内では以前からTOEICによる英語力の把握が主流です。当社に届く求人票にも「TOEIC何点」という資格要件が入っていることが少なくありません。

たとえば、45歳以上の環境シニア世代に関していうと、職種としては管理職です。環境ビジネスが国内対策から海外ビジネスに拡大する中、管理職には海外で活躍してもらうための英語力が求められます。

具体的にはTOEIC730以上の英語力というのが一般的です。ただしTOEICの場合、リスニング力とリーディング力の判定はできても、ライティング力とスピーキング力の判定にはやや不足感があるのが実態なので、採用面接に おいて、実際に会話力やビジネス文書の作成能力を試す企業もあり ます。

 

環境分野の仕事に求められるスキル

mountain-1030705_640

このように環境分野の仕事で求められる資格は、業務経験を証明するための技術系の資格と、ビジネスのグローバル化に伴い要求される語学力を証明するための資格に整理できます。

一方、資格では証明できないが、転職の際、業務上要求されるスキルがあります。ここでも45歳以上の環境シニア世代を対象に考えてみましょう。

新卒で入社し定年まで勤め上げる場合は、社内で要求されるいわゆる「社内限定能力や社内資格」を保有していればよいのですが、昨今の雇用環境では転職を考える方が増加していますので、今はどの企業に入社しても通用するスキルが要求されます。

私は年間200名近くの転職希望者と面談を行います。そこで、環境シニア世代で転職できる人とそうでない人の差が如実に現われる点は、新しい環境に移ってもやっていける「適応力」にあると感じます。

職場が変われば環境も変わり、人間関係も一新されます。外資系企業では年下の上司の指示に従うことは当たり前で、前職の肩書きをおもんばかってくれる同僚はいません。

そのような環境の中で、ものごとを謙虚に捉え、年を重ねることによって発生するプライドをいったん捨てることができるような方が採用面接を通過するのです。

 

環境分野の転職に成功した実例

50代男性(A氏) 当社に来られたのは2012年末でした。A氏は中規模製造業で技術者として活躍していましたが、昨今の景気低迷により早期退職を余儀なくされました。A氏は新卒で入社後、電気設備の技術者として設備の保守点検やトラブル対応に長年当たり、40代からは主に管理職として業務経験を積んでいました。

電気分野での技術経験は広範囲に渡っていましたが語学は苦手で、海外出張の際は通訳を介してのコミュニケーションが中心でした。第一種電気主任技術者を保有していたので、昨今の太陽光発電関連の仕事には業務上の適性がありましたが、企業側は若手技術者を求める傾向が強く、すぐには仕事に就けない状況が続きました。

しかし、A氏の魅力は履歴書に現われない人柄にありました。一社に長く籍を置いてはいたものの、新たな環境に移るに当たり謙虚な姿勢を崩しませんでした。

年が明け、当社に環境コンサルティング会社から、国内太陽光発電施設の施工管理の求人が入りました。このコンサル会社では、昨年若手を増強しましたが、彼らを取りまとめ業務管理を行いながら、現場にも出ることのできるシニア世代を求めていました。

幸い国内事業がメインでしたので英語力を求められないポジションでしたが、職場の社員のほとんどは20~30代の中途採用者がほとんどを占めており、職場環境を聞いた私は、彼らを管理するのは一筋縄ではいかないと感じました。

そこで、A氏の職務経験と人柄であればそれが可能だと感じこの求人を打診したところ、面接が円滑に進み内定に至りました。

紹介先の人事担当者から内定決定のポイントを伺ったところ、「技術力はもちろんだが、A氏の人柄が採用のポイントでした」とのことでした。

 

まとめ

環境分野の資格とスキルについて、当社の実例とともにご紹介しました。2013年4月からは「改正高年齢者雇用安定法」が施行され、サラリーマンは希望すれば65歳まで働けるようになりました。

一方で、人材会社に登録するシニア世代には、「一つの会社で人生を終わらせたくない」と考える方が多いと感じることがあります。第2回からは、ダイナミックに変動する求人の傾向とともに、実例も含め紹介していきます。

この記事の著者

あわせて読みたい

  一言で、日本政府ならびに産業界のリーダー達が「気候変動」(地球温暖化)を、重要課題として認識し、行動を起こさないからです。こうした背景には、石炭、石油、天然ガス等(化石燃料…
1.はじめに 冷戦時代は、米国の自由主義陣営とソビエト連邦を中心とする社会主義陣営とに分かれていました。しかし、1989年のベルリンの壁の崩壊により、それまで12億人の自由主義市場経済が一気に4…
  30年前から提唱される「地球崩壊のシナリオ」 私は、1990年代初頭から気候変動(特に地球温暖化)が私達の生活にどのような影響があるのか、専門である山本良一氏の発言につい…
  1. はじめに 日本人の知識人(インテリゲンチャ)は、海外における活動において、自分と同じような知識バックグラウンド、あるいは他の豊富な知識人たちとのコミュニケーショを好む傾…
環境コミュニケーションズ