エネルギー
2015.11.13

中国における省エネ・スマートエネルギーの現状 3/3


 

電源多様化が後押しするスマートグリッド構築への取組み

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再度表を見ると、石炭火力の卸売価格がかつてのように他の電源に比べて圧倒的に安価で価格優位性を持っていた状況が終わりつつあることが見て取れる。

 

前の記事→中国における省エネ・スマートエネルギーの現状 2/3
筆者:ECOLOGライター(堀井 伸浩)

(この記事は弊社発行媒体「日中環境産業 (2013年11月号)」より再編集して掲載しています。)

 

 

2010年の石炭火力の卸売価格は0.355元/kWhであった。この水準は2000年代の前半と比較すると2割程度の上昇となっているが、まだ他の電源と比較すると依然として優位性を維持していたといえる。

 

しかし2011年に0.45元/kWhにまで上昇すると、もはや原子力の方が今後のコストダウンの余地も考えると魅力的な選択肢ということになってくる注3)。現在、中国で原発を建設することが認められている事業会社3社は相当先まで受注残が積み上がっているとされ、すでに策定済の建設計画を大きく上回って原子力導入が進むという可能性はそれほど高くはなさそうである。

 

とはいえ、石炭火力と同様にベースロードとしての特性を持つこと、また石炭火力が今後もコスト上昇の可能性があるのに対し、原子力は設備の国産化が進んでむしろコスト低下の可能性が高いことを考えると、原子力の導入は福島第一原発の事故により若干の減速は迫られながらも、今後も着実に進んでいくことになりそうである。

 

そこで電源構成について2010年時点での実績と2020年の見通しを示した図を見ると、確かに石炭火力の比率が4ポイントながら減少している。設備容量全体は2010年の9億6,641万kWから2020年にはほぼ倍増の18億8,500万kWにまで拡大することが見込まれている。

 

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水力は価格面での優位性があり、実際、12・5計画では大々的に建設が進むことが想定されているが、その後は資源的な制約から建設スピードは低下することが見込まれている。

 

注目されるのが原子力と風力の大幅な伸びである。原子力は先述のとおり、ベースロードとして石炭火力の役割を引き継ぐ一方、風力も比率を10%にまで高めることが想定されている。

 

風力は2010年時点で4,231万kWの導入設備容量となっており、2005年の126万kWと比べて11・5計画期間に急拡大した。12・5計画では1億kWが導入目標として掲げられており、11・5計画期の年率104%の成長からは大幅に減速するが、2020年にも1億8,000万kW程度が想定されているとおり、引き続き堅調な導入が図られている。

 

また太陽光は2020年でも1%(約1,800万kW)と低い数値として示されているが、先頃発表された再生可能エネルギーに関する12・5計画の確定版では、太陽光は12・5計画の草稿段階で示されていた500万kWから大幅に引き上げられ、2015年に1,400万kWの導入計画となっている。

 

2010年時点ではわずか80万kWの導入量に過ぎなかったわけで、導入の急拡大が計画されている背景には、中国国内の太陽光パネルメーカーが欧米市場の急激な縮小によって経営危機にあり、これまで輸出主導で伸びてきた中国メーカーを国内市場の立ち上げで救援しようとする思惑があると考えられる。

 

以上のように、2020年時点で風力と太陽光で少なくとも10%、恐らくは実際にそれ以上に電源構成において間欠性のある(出力変動が大きい)再生可能エネルギー電源の比率が高まることを踏まえると、電力系統も当然その対応を行う必要がある。

 

現状では、技術面も含めてその対応は後手に回っており、内モンゴルや青海省など、風力発電の電源構成に占める比率が非常に高くなっている地域では、一斉脱落などで系統全体が不安定化する事故が実際に発生している。

 

導入が急拡大してきた風力発電についても、2010年末時点で導入済の設備容量は4、231万kWに達した一方、送電系統に接続された容量は2、956万kW、すなわち全体の7割程度に留まるとされている。

 

電力系統を管理する国家電網公司は2010年1月に「国家電網智能化規劃総報告」を公表しており、それによると12・5計画期間中に合計出力が3万kW以上のウィンドファームについてはすべて系統接続する目標が掲げられ、そのために保護継電器や変流器、インバータシステムなどの導入を大幅に進め、さらに電力系統によるディスパッチングを自動化するシステムを構築することが計画されている。

 

また10MW級の大容量蓄電池システムのパイロットプロジェクトが立案されており、変電所についても2011年以降の新設変電所については、スマートグリッド対応が求められることとなっている。

 

さらには2011年時点で地域および省級電力網で最新型の系統管理システムが導入されており、2015年には50%の県でスマートグリッドに向けた高度な系統管理システムの導入が図られている。

 

国家電網公司のスマートグリッド化に向けた取組みはここであげたものに留まらず、他にも多岐にわたる。そうした取組み全体で2009年~2010年にかけて341億元が投資され (2010年分は計画値を含む)、12・5計画期間と2016年~2020年の期間はそれぞれ合計で1、750億元(年平均350億元)と大規模な投資が計画されている。

 

 

日本はビジネスチャンスをつかむことができるか?

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これまでの分析をまとめよう。12・5計画期間においては、石炭価格の制度改革を起点にした石炭、電力や天然ガスの価格上昇が今後も進んでいくことになるだろう。

 

これは省エネルギービジネスにとって、省エネメリットを増大させるという意味で、良好な事業環境を創出するものだといえよう。11・5計画期間においては、行政的手法による省エネルギーへの取組みが主だったが、それは結局省エネルギービジネスの機会を生むものではなかったともいえる。

 

その意味で、12・5計画期間はようやく本格的に省エネルギービジネスへの強い追い風が吹きつつあるといえる。また風力、今後は太陽光といった再生可能エネルギー電源の導入量が大きく増えていくことが見込まれる中、電力系統安定化に必要な機器、系統管理システムの導入が大きく進展することが期待される。

 

このように12・5計画期間において、省エネルギー、スマートエネルギー分野で大きなビジネスチャンスが出現してくると予想される。しかしこのビジネスチャンスを日本企業がつかむことができるかは若干心もとない。

 

11・5計画の後半、筆者は現地調査の際、地方の役人や企業関係者から切羽詰まった態度で「、日本の省エネルギー技術を導入するにはどうすればよいのか」としばしば質問を投げかけられた。

 

省エネルギー対策は地方が責任を持つ形で進められてきており、地方には莫大なニーズが存在するが、実際のところ日本企業は地方への食い込みが不十分であることの反映ではないかと感じた。

 

また近年、中国政府はさまざまな産業で海外からの技術導入を進めながらも、数年後には中国企業による国産化を実現するよう、 「以市場換技術」(=市場を提供する代わりに技術移転を迫る)産業政策を推進してきている。中国企業のキャッチアップを前提としながら、自らの利益を確保するためには新しいビジネスモデルを構築する必要がある。

 

確かに中国は競争の厳しい、タフな市場であるが、中国市場を取らずして今後の発展は望めない。昨今の日中関係の悪化という外部環境を見ると、さらに困難が増し、ふさぎこむ気持ちになるが、積極的に攻めるべきだと日本企業にエールを送りたい。

 

中国における省エネ・スマートエネルギーの現状 1/3
中国における省エネ・スマートエネルギーの現状 2/3

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