ユニ・チャームにおけるCSR
ユニ・チャームでは、さまざまな社会的課題を当社のコア技術を使って本業で解決し、企業理念である「NOLA&DOLA(NecessityofLifewithActivities&DreamsofLifewithActivities赤ちゃんからお年寄りまで、生活者がさまざまな負担から解放されるよう、心と体をやさしくサポートする商品を提供し、一人ひとりの夢を叶えたいという考え)」を実現することが、当社のCSRであると考えます。
筆者:ECOLOGライター(ユニ・チャーム(株) コーポレート・ソシアル・レスポンシビリティ部)
(この記事は弊社発行媒体「環境パートナーズ(2013年4月号)」より再編集して掲載しています。)
加速が進んでいる高齢化の対応では、ADL(ActivitiesofDailyLiving:日常生活動作)の段階別に最適な排泄ケアを提案、自立をうながすことで寝たきり率の低減と健康寿命の向上への貢献を、またアジアを中心としたベビー用紙おむつ・生理用品の普及により女性の地位向上や貧困削減への貢献など、生活者の人生を快適にするため各国・地域に密着した事業活動を通じてグローバルで社会的課題解決を推進しています。
また、当社は消費財メーカーのため、特に環境に配慮した活動が重要であると認識しています。工場、事業所における環境負荷低減のみならず、省資源、製品廃棄物の削減など商品ライフサイクルを通じた環境負荷低減に取り組み、地球環境保全と経済成長を両立させた持続可能な社会の実現をめざしています。
環境への取組み、これまでのカーボン・オフセットの取組み
自社商品のライフサイクルで環境負荷を見ると、原料の加工・調達に関連する負荷がもっとも高く、次いで製造段階、廃棄段階、輸送段階の順となります。当社では、各段階での環境負荷低減を図るため、製品環境ワーキンググループ(以下、WG)、省エネ対策WG、廃棄物リサイクルWGの3つのWGにより環境対策を推進しており、工場・事業場ではISO14001を運用し継続的改善を推進しています。
排出する温室効果ガスの大半はCO2が占め、主な対策として、
①環境配慮型商品の開発
②生産設備の省エネ、生産性向上
③クレジットの活用
に取り組んでいます。
①環境配慮型商品の開発
製品の薄型・軽量化により資源調達段階をはじめ、加工、輸送、廃棄の各工程でのCO2低減をめざしており、環境目標に「環境配慮型商品比率拡大」を設定して継続的に取り組んでいます。
製品の機能を向上させることにより結果的にライフサイクルでの環境負荷低減につながるため、製品機能向上と環境性能を数値化してファクターを算出、自社基準に適合したものを「エコチャーミング商品」に認定しエコラベルをつけて普及啓発を行っています。
エコチャーミング商品の一例として、尿吸引ロボ「ヒューマニー」では、従来の大人用おむつによる排泄ケアで1日5~7回尿取りパッドの交換が必要であったものが1~2回に減るため、約35%のCO2削減効果となります。
②生産設備省エネ、生産性向上
付帯設備の省エネ機器導入、現場での改善研究会の開催等による地道な活動や太陽光パネルの導入などを推進しています。当社の生産工程で発生するCO2の約9割は電力消費によるものであり、工場・事業所では省電力を目標に掲げ改善しています。
また、日本国内で効果が上がった改善活動については積極的に海外工場に横展開し効果の拡大を図っています。
オフィスにおける取組みでは、クールビズ、ウォームビス、サマータイムの導入、一斉退社などに取り組み、オフィスにおける夏季の電力使用料は2010年度比で2011年度、2012年度とも-30%を達成しています。
③カーボン・オフセット活動
2008年より取組みを開始しました。当社の主力商品である紙おむつや生理用ナプキンは、お客様の使用段階ではCO2は発生しませんが、廃棄段階では廃棄物処理に伴いCO2が発生します。
現在の廃棄物処理はほとんどが焼却処理となっており、環境配慮型商品の拡大により従来に比べ単体の焼却量は減ってきてはいますが、適正処理のためにどうしてもCO2は発生してしまうため、これを削減するための手段の一つとしてカーボン・オフセットに取り組みました。
2008年はベビー用紙おむつの購入代金の一部を使用し、約3、400tのCO2をオフセットしました。2009年、2010年も引き続き同様のカーボン・オフセット活動を実施しており、2010年度は従来活用していた京都クレジットから、国内クレジットの活用に変更、日本国内のバイオマスを活用したCO2排出量削減事業により創出されたクレジットを購入しました。
東日本大震災復興支援型国内クレジット活用スキーム
2011年度は経済産業省が推進する「復興支援型国内クレジット活用スキーム」に取り組みました。この取組みは、国内クレジット制度のしくみを用いて、売却代金の半額を、運営・管理を行う経済産業省の委託先である(株)イースクエアを通じ、とくに被害の大きかった岩手県、宮城県、福島県に継続的に寄付する取組みです。
経済産業省では、排出削減事業者およびクレジット活用企業等のCSR活動の一助となるような国内クレジット制度の新たな取組みとして、より多くのクレジット活用企業を獲得するとともに、これまで以上に全国の中小事業者等の温室効果ガス削減を進めるための活動を推進しており、本スキームは2013年3月までの取組みとして実施されました。
東日本大震災では、当社の福島工場も被災しています。幸い人的被害はありませんでしたが、工場建屋などが被災し全面復旧までに2カ月かかりました。今回のオフセットは福島工場における約1カ月分の発生量とし、被災地を環境 負荷低減と寄付の両面から支援す る活動として取り組みました。
カーボンオフセットの内容
被災地支援と環境負荷低減活動の両立をめざし、当社のお取引先である(株)ツルハホールディングスとともに本スキームに取り組みました。ツルハホールディングスは各店舗の省エネを推進、国内クレジットの認証を取得すると同時に車椅子の寄付など社会貢献にも積極的に対応されています。
今回はメーカーである当社と小売業者のツルハホールディングス、お客様が協力した国内クレジットの初の取組みとして活動しました。オフセットの流れとしては、ツルハグループの各店舗でお客様が当社商品を購入された代金の一部により当社が国内クレジットを購入します。
購入するのはツルハグループの東北地方のドラッグストアにおける照明設備の更新により創出されたクレジットです。ツルハホールディングスは購入代金の半額分を被災地に寄付します(実際の手続きは経産省の委託事業者であるイースクエアが行います)。
結果として、<お客様>当社商品を購入することで、自動的にCO2削減と復興支援に貢献。<ツルハグループ>店舗の省エネにより削減したCO2を、国内クレジットとして売却。収益の一部の被災地寄付による社会貢献。<当社>商品の売上の一部で国内クレジットを購入することで自社活動起因のCO2をオフセット。が実現しました。
お客様への周知と参加促進のため、今回は「復興支援キャンペーン」を併せて行いました。「あなたも応援団!復興支援キャンペーン」と銘打ち、東北自慢の美味しい名産品を抽選でプレゼントすることで、より多くのお客様に関心を持っていただきスキームに参加していただきました。
さらに、カーボン・オフセットの活動をわかりやすく図示したポスターを作成し売り場をはじめHPなどに掲示、啓発を図りました。今回のキャンペーンには多くの応募をいただき、はがきにお客様のメッセージを添えて応募いただきましたが、
「こういった社会貢献は大賛成です。私の買い物で復興支援に役立てるのならこんなに嬉しいことはない」「自宅でもエコに取り組んでいます、少しでもできることから始めたい」「私たちも電気、ガスを節約します。一緒にがんばりましょう」
といった心温まる応援をいただきました。環境意識、社会貢献意識の高い消費者、小売業者と一体となった取組みが認知され、活動の輪が広がったと考えます。また今回は、国内初の取組みであったこともあり、新聞、環境関連Webサイトなど各方面で情報が広く取り上げられ発信されたことで取組みの周知が進み、ツルハホールディングス、当社の社会価 値向上に少なからず寄与したのではないかと考えます。
このスキームは、国内クレジット活用と本業が結びついた活動であり、環境、社会貢献とともに経営にも貢献する活動になったと考えます。その結果、第2回カーボン・オフセット大賞、経済産業大臣賞を受賞させていただきました。
受賞は「メーカー、小売業者、顧客が協力し国内クレジットを活用して被災地の復興支援を行った新たなビジネスモデルとして、カーボン・オフセットの普及に大きく寄与すると認められた」ことが評価されました。
本業を通じた取組みが評価されたいへん光栄であり、ご協力いただいた皆様、関係者の方々に御礼を申し上げます。
今後の対応
復興支援型国内クレジット活用スキームによるツルハホールディングスとの共同キャンペーンは2012年度も継続して実施しています(復興支援キャンペーン実施期間2013年1月16日~3月15日)。
このほかに継続的な被災地支援として、当社ではスーパークールビズ、ウォームビスにおけるマッチングファンド企画による支援を実施しています。これは、クールビズ、ウォームビズにおいて社員が会社で着用するポロシャツ、ジャンパー等を販売し、販売額と同額分の物品を被災地に寄付する取組みで、2011年度クールビズより継続実施しています。
「復興支援型国内クレジット活用スキーム」は2012年度でスキーム自体が終了しますが、さまざまな取組みにより今後も環境保全、社会貢献に取り組み、企業の社会的責任を果たしてまいります。