カーボン・オフセット制度の最新動向について


―カーボン・オフセット認証の動きとJ-クレジット制度の最新の状況について―

 

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カーボン・オフセット制度

日本において、地球温暖化対策の手法として「カーボン・オフセット」の取組みが大きな拡がりを見せたのは、平成20年に開催された洞爺湖サミットからといわれています。それ以降、同年の京都議定書第一約束期間の発効と相まって、多くの企業・団体の皆様が「カーボン・オフセット」に取り組んでいただけるようになりました。

 

筆者:ECOLOGライター(環境省地球環境局地球温暖化対策課市場メカニズム室室長補佐 三好 一樹)
(この記事は弊社発行媒体「環境パートナーズ(2014年5月号)」より再編集して掲載しています。)

 

一方で、カーボン・オフセットは、省エネなど自らの努力だけでは削減しきれない温室効果ガスの排出量を、目に見えない「クレジット」等を用いて埋め合わせることから、カーボン・オフセットの取組みの信頼性確保が重要であるとして、環境省では「我が国におけるカーボン・オフセットのあり方 (指針)」を平成20年2月に公表、同年10月には「カボン・オフセットの対象活動から生じるGHG排出量の算定方法ガイドライン」 「カーボン・オフセットの取組に係る信頼性構築のための情報提供ガイドライン」などを公表し、多くの方にカーボン・オフセットの取組みが信頼されるものとなるよう、基準・ガイドラインの整備を進めてきました。

 

その中で、カーボン・オフセットの取組みを第三者が評価し、認証や証明を与えることにより、信頼性の高いカーボン・オフセットの構築および取組みの推進につながるものとして、平成21年3月に 「カーボン・オフセットの取組に対する第三者認証機関による認証基準」を策定し、同年4月より、気候変動対策認証センター(事務局:(社)海外環境協力センター内)が第三者認証機関として「カーボン・オフセット認証制度」を開始しました。

 

カーボン・オフセット認証制度では、約3年間の制度の中で100件の取組みが認証され、「カボン・オフセット認証」を取得された商品やサービス、イベントなどを通じて、カーボン・オフセットの普及・促進の一躍を担ってきました。

 

一方で、カーボン・オフセットの活性化について検討が必要との観点から、平成23年には「我が国におけるカーボン・オフセットの取組活性化について(中間とりまとめ)」において、カーボン・オフセットの高付加価値化としての「カーボン・ニュートラル」とともに、制度の活用機会を拡大するための認証主体の多様化が盛り込まれたことから、平成24年度からは カーボン・オフセット認証制度を「カーボン・オフセット制度」と発展的に制度を改定し、カーボン・オフセットについては認証主体を 気候変動対策認証センターから、JISQ14065注1)認定を取得された審査機関と拡げました。

 

カーボン・オフセット制度を開始して、認証主体を拡大した効果がすでに表われており、旧制度では3年間で100件であった認証件数が、新制度開始から1年足らずで62件(平成25年3月29日時点)の認証件数となっており、企業や地域の方がカーボン・オフセットに認 証ラベルを活用したり、一般の多 くの皆さんが認証ラベルに触れて いただく機会が増えています。

 

 

カーボン・オフセットの「地産地消」の動き

 

平成24年度から始まった「カボン・オフセット制度」で認証された取組内容を見てみると、旧制度における企業・団体のCSR活動や環境配慮型商品・イベントの取組みに加えて、地域の地場産品や地域イベントの取組みに、地元のオフセット・クレジット(J-VER)を用いる、カーボン・オフセットの「地産地消」ともいえる取組事例がたいへん多くなりました。

 

この傾向は、平成23年度から行っている環境省の「地方発カーボン・オフセット認証取得支援」の成果ということができますが、すでに2回目、3回目の認証を取得されている地方の取組みもあり、企業の環境配慮型商品の認証と同様に、その継続的な効果が表われてきているといえそうです。

 

また、地産地消型ともいえる取組みの中には、地場産品によるカーボン・オフセット商品を、地元の地域だけでなく首都圏などの大都市で販売する、「地産外商型」といえる事例がいくつかあります 。これは、地元の特色ある商品、たとえば、農林水産品やその加工食品等を大都市などで販売 促進する際に、それらが環境に配慮された商品としてPRされ販売 されることが多くありますが、そ の際の環境配慮を伝えるツールとして「カーボン・オフセット認証」を活用する事例が増えてきています。

 

この場合、消費者の皆さんには、カーボン・オフセットのしくみや商品の特色を御理解いただいて、商品を手にとっていただくことが販売促進のポイントとなることから、該当商品の販売期間を限定しつつ、東京周辺に多い全国各地のアンテナショップや有名百貨店での対面販売などで、カーボン・オフセットのしくみをパンフレットや口頭で伝えられることが多いようです。

 

この「地産外商型」カーボン・オフセットで効果を上げている事例の中には、首都圏で毎年定期的に販売を実施されているものや、販売促進活動によって首都圏の大手小売企業と契約に至った事例も出てきており、カーボン・オフセットの取組みが、地球温暖化対策に留まらず、地域振興や活性化にも繋がっていきます。

 

御紹介しました「地産地消型」や 「地産外商型」に活用されるクレジットはJ-VERが主体でしたが、J-VERは平成25年4月から開始する「J-クレジット制度」で生み出される「J-クレジット」に引き継がれていくことになります注2)。

 

J-クレジット制度は、平成25年3月13日に第1回準備委員会が開催され、J-クレジット制度の基本文書案について審議を行い、パブリックコメントを経て修正した文書により制度が開始されることとなります。また、4月5日には第2回準備委員会が開催され、J-VER制度と国内クレジット制度における温室効果ガス削減・吸収の方法論を取りまとめた56のJ-クレジット制度の方法論案について審議を行い、制度基本文書と同様に、パブリックコメントを実施して開始となる 予定です。

 

J-クレジットの方法論については、これまでのJ-VER制度、国内クレジット制度と同様に、温室効果ガス排出量削減・吸収に関する新しい方法論などについても、J-クレジット制度の「方法論策定規程」に基づく御提案を受けつけていきますので、方法論の数はさらに増えていくことになると思われ、地域の特色を活かした排出削減・吸収方法によるJ-クレジットも生み出されることで、「地産地消型」「地産外商型」のカーボン・オフセットに弾みがつくことになると思います。

 

 

おわりに

カーボン・オフセットの重要な 意義・効果として、活用されるクレジットを通じて地域の削減等プ ロジェクトを行う事業者に資金が還流し、国内投資の促進や雇用の 確保、それらを通じた地域活性化 にも貢献することを期待されていますが、さらに地産地消型カーボン・オフセットでは、地域で削減等プロジェクトを応援していくことにより、地域の取組全体を情報発信することが可能となります。

 

環境省では、各地で生み出されるJ-クレジットの活用と合わせて、地域の取組みがさらに増えて地域における温暖化対策と活性化が促進されるよう、各種支援事業を実施してまいります。

 

注1)JISQ14065:JISQ14064規格群(国際規格であるISO14064に対応した、温室効果ガスの算定・検証に係る規格群)における、温室効果ガス―認定または他の承認形式で使用するための温室効果ガスに関する妥当性確認および検証を行う機関に対する要求事項。この要求事項に基づき、日本における認定機関が認定した審査機関のことを、いわゆる「14065認定機関」ということがあります。
注2)発行されているJ-VERおよび国内クレジットについては、平成25年度以降も平成32年度(J-クレジット制度の終了時期)までは有効となっています。

 

 

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